化膿性脊椎炎は他の感染病巣から直接あるいは間接的に椎体終盤付近に感染を起こして発症をします。
熱発や背部痛が主な症状で脊柱管に膿瘍が波及して硬膜管を圧迫すれば感覚障害や運動麻痺を生じます。進行し椎間板や椎体破壊を生じると脊椎の支持性が失われてしまい固定術が必要になってきます。
交通外傷で多い脊髄損傷ですが、これは感染性の脊髄損傷ですね。
化膿性脊椎炎には安静が必要!コメディカルは感染性心内膜炎に注意して介入しよう。
目次
化膿性脊椎炎とは?
画像出典:Anatomography 一部加工あり
起炎菌の特定と同定率
まずはなにが悪さをしているのか特定が必要です。方法は血液検査によるものと患部から直接組織を取り出す組織生検培養があります。第一選択はDrによって違うようです。
血液は簡単で安全に採取可能で、生検は正確ですが手間がかかります。
元文ら(2011)は血液培養32例中17例で53%を同定、生検あるいは手術時の検体培養で28例中19例を68%を同定できたとしています。
やはり生検の方が正確性が高いですね。
特定が100%にならない理由はいくつか考えられ、熱発やCRPなど炎症兆候がでた段階で抗菌剤によって先に叩かれていたり、炎症が沈静化する時期であれば特定は難しくなります。
予後不良因子
①感染部位
元文ら(2011)は運動麻痺は58例中(頚椎10例、胸椎12例、腰椎36例)中の14例に認められられたとしています。
部位別に運動麻痺を見ると頚椎では70%、胸椎では50%、腰椎では3%に認めたとし、頚椎・胸椎の神経障害の頻度が高かったとしています。
上位の脊椎炎の麻痺症状の有無は要チェックですね。
②怖い合併症 心内膜炎
画像出典:感染性心内膜炎 – Wikipedia 感染性心内膜炎によって生じた僧帽弁上の疣腫(ゆうしゅ)
感染性心内膜炎は心血管系の代表的な感染症で、疣腫(ゆうしゅ)とよばれる細菌や真菌の塊が心不全症状を起こすものです。
塚本ら(2011)は心内膜炎の合併は化膿性脊椎炎の24例中3例で12.5%であったと報告しています。臨床症状は熱発と胸痛などですが、心音の確認やエコーでないと判別は難しいようです。関わる際は合併している化膿性を念頭におきましょう。
治療
起炎菌の同定を行い抗菌剤で治療を行ないながら、硬性コルセットを装着して安静が求められます。これで十分な効果があがらない場合は外科的に脊椎の固定や膿瘍のドレナージが実施されます。
保存療法では、尾又ら(2012)はある程度の硬性コルセットの有効性を認めた上で、徹底した絶対安静による脊柱の免荷で運動麻痺をおこさせないことを勧めています。
また観血的な治療では、田岡ら(1995)は国分ら(1978)の化膿性脊椎炎の文献を引用し、「著しい骨硬化に囲まれた中心病巣はは化学療法に対して良好な反応を期待しがたいと述べている」とした上で、いたずらに保存療法をくりかえすだけでなく手術的治療を考慮するべきとしています。
保存治療から観血的治療への判断は抗菌剤投与を行って2〜3週や、6〜8週で改善がないものに外科的治療が有効であったとしている文献もあるようです。
まとめ
コメディカルとしては熱発と背部痛を合併した際に化膿性脊椎炎の選択肢が思い浮かぶようになりましょう。また神経徴候や心内膜炎などを念頭に置きながらDrなど他職種と連携をおこないましょう。
参考にした文献、HP
元文芳和 他,化膿性脊椎炎,日医大会誌,7(1),pp.27-30.2011.
塚本正紹 他,当院における化膿性脊椎炎の検討,整形外科と災害外科,60(4),pp.671~674.2011.
田岡祐二 他,化膿性脊椎炎におけるMRIの診断価値,整形外科と災害外科,44(3),PP.1080-1082.1995.
尾又弘晃 他,当院における化膿性脊椎炎100例の報告,昭和医会誌,72(6),pp615-619.2012.