TKAの手術ではギャップがとても大切にされています。
ギャップとは関節裂隙の空間のことで屈伸ともにギャップの値が設定されていて、
うまく調整できないと曲がらないし伸びない膝ができあがります。なのでDrは構築学的に成立する膝を作るのにあれやこれやでギャップの調整をするわけですよ。
基本的には教科書的にカットが進むわけですが個人にあわせた微調整が必要です。どこに拘って仕事をしているのかPTとして興味がわきませんか?
今回はどうやって微調整をしているのか少しお話が聞けたのでまとめておきます。
TKAの屈曲ギャップをDRはどうやって調整しているのか?
目次
①骨でTKAの屈曲ギャップを調整する
とくに矢状面状での骨のカットは屈伸ギャップに大きな影響を与えます。切る位置によってギャップの出る位置が変わります。ちなみに前額面では内側にインプラントを寄せすぎるとMCLをインピンジメントする恐れがあるので注意するそうです。
画像出典:Anatomography 一部加工あり
大腿骨を切って調整
伸展のみギャップが欲しい場合は青色の①ラインを深くカットします。逆に屈曲のみギャップが欲しいときは赤色の②ラインを深くカットします。
脛骨を切って調整
脛骨は④のラインのように水平にカットしてインサートを入れますが、この深さを変えると屈曲伸展ともにギャップが広がります。
シャンファーとは?
①②③のラインで仕切られたオレンジ色の隙間はシャンファーと呼ばれています。これはおそらく「chamfer」のことで、かどをそぐ・面取りするという意味です。
②軟部組織でTKAの屈曲ギャップを調整する
骨で調整するよりも軟部組織でバランスをとるのが大切とのことです。できるだけ骨を温存するというのは整形外科医の常識的な発想のようで、理由は骨が減るごとに次の打つ手がなくなってしまうからです。
内反膝のOPEなら下記のように少しづつ進みます。
たとえばですが下にいくほど骨が削られていき次の選択肢が限られます。
- 内視鏡で滑膜切除(骨保存)
- 脛骨高原骨切り(関節面温存)
- CRタイプTKA(PCLほか後方の脛骨温存)
- PSタイプTKA(脛骨後方含も取り換え)
- 拘束型タイプTKA(とても強い内反膝など特殊な場合に使うTKA、表層だけでなく髄腔まで侵入)
- ガードルストーン法(TKAをおこなったけど感染などで抜去してそのまま保存する方法、直接骨で受ける曲がらない関節になり補高が必要)
MCLの深層を剥離
内反OAはLCLは緩くMCLはタイトです。MCLを少し剥離することで少し内側のギャップを稼ぐことができます。
ACLに針で小さな穴をあける
OAでカチコチになってるPCLに針でプスプスさして柔らかくすることもあります。
TKAの屈曲ギャップは1mmで変化する世界
お話を聴いてると1mm単位でこだわってギャップを調整されています。なのでインプラントのサイズをより細かく変えることができるメーカーに変えたり、されるそうです。PTとしてはインソールの世界を彷彿とさせられました。またパテラ側の工夫など聴いてみたいと思います。