少し前にTKAについてまとめましたが、一見ではPS型とCR型を実際に判断するのは難しいです。手術者に確認を行うのが確実ですが、デイや訪問や他院でのOPEであれば確認が難しいのが現状だと思います。そこで自分なりにどうやって確認するのか、3つほど上げてみました。
サギング徴候の有無
目次
CR型とPS型の違いはPCLを切断するかどうかと以前の記事に書かせていただきました。ですからPCLの引き出しテストをすればPS型では陽性になるはずです。
実際にPS型の膝を観察するとやや脛骨が後方に落ち込んだ軽度のサギング兆候を観察できますし、後方引き出しテストが陽性になります。しかしPCL断裂と違って大きく沈み込むわけくポストとカムに接触してわずかに沈み込むだけです。エンドフィールは心なしかコツコツしています。
骨セメントの有無
画像出典:Anatomography 一部加工あり
徒手テストに比べて環境が限られますが、画像が確認できれば正確性が増します。
画像は単純レントゲンで左膝を正面から撮った場合を想定しています。青い部分がチタンなど金属部分で赤い部分が骨セメントのもやもやとした影の部分です。
基本的には骨セメントを用いてTKAは固定するのですが、CR型の脛骨ベースプレートにはセメントレスタイプのメッシュがついたものもあります。メッシュは表面がザラザラとしていて骨の癒合が起こりやすい形状になっています。
CR型は脛骨後方とPCLを残すので荷重伝達がPS型より効率よくて弛みが生じにくいようなのです。
なので骨セメントのもやもやとした影が脛骨ベースプレートに見えない場合はCR型の可能性が高いです。
それでも長期で見ると脛骨のセメントレス固定は10%程度の患者さんに脛骨ベースプレートの緩みが生じているようなので、セメントレスの頻度は減少しているようです。wev界隈を眺めていると横浜の野村栄貴DrがTKAのお話に詳しいのですが「当院では、脛骨はセメント固定、大腿骨コンポーネントはセメントまたはセメンレス固定です。大腿骨は完全なプレスフィットが得られたときのみセメントレスにします」と書かれており、セメント固定を奨励されています。
ですからセメントレスは少ないと思うのですが、判断基準の一つとして知っておきましょう。
ポストが見えるか
画像出典:Anatomography 一部加工あり
こちらも同様に青い部分が金属で赤い部分が骨セメントです。そして黄色い斜線が高密度ポリエステルです。
矢状面でも骨セメントが確認できますね。こちらでは膝蓋骨コンポーネントを接合する骨セメントのもやもやが見えます。
ポリエステルはX線で透過するので金属のようには見えないのですが、よく観察すると周囲とコントラストがあります。このため脛骨コンポーネントの形をある程度、推理することができます。とくに注目すべき点はポストの有無で、ピンクの円で囲った部分に盛り上がりが確認できればPS型です。
前額面からは金属部分にポストがかぶってしまい見えないのですが、矢状面なら金属にかかる前のわずかな盛り上りが確認できます。
まとめ
どれか一つだけでなくて、3つで総合的に判断できるとより正確性が上がりますね。
二つを判別することで色々と考えることができます。例えば〜
- PCLがないことで関節位置角の低下
- 異音からポストの損傷や緩みを想像
- PS型なら後方組織まで深く切るので癒着を考える
- CR型ならPCLの耐久性を疑う
などです。自分はどの型の患者さんを見ているか是非考えてみて下さいね。
※2018年5月16日追記
我ながらアホな記事にため息がでます。。。
オペ録みたり主治医にどっち使ったか聞けよって話ですよ。
ただこれを書いてたときには、他院からTKAが回ってきてオペ録がよめなかったり主治医とお話ができない状況でした。
当時のことはもうボンヤリしていますが、それでもTKAの判別方法を我流で探そうとしていた記事なのでしょう。
ちなみにレントゲンで側方からの画像なんてみないでも、正面からみて大腿骨側にポストが入るだけの深い切込みがあるほうがPSです。なければCRということ。
参考にした文献、HP
人工膝関節置換術[TKA]のすべて−安全・確実な手術のために
Mobile bearing 人工膝関節二おける跨ぎ動作時の3次元動態解析 田中あづさ
Problems with cementless total knee arthroplasty at 11 years followup.
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