肩甲骨面挙上の角度を知ろう〜スキャプラプレーン scapular planeとは〜

肩関節外転の大きな疎外因子として大結節と鳥口肩峰アーチの衝突、impingementがあります。これを避ける方法には上腕骨の外旋がありますが、もう一つ肩甲骨面(スキャプラプレーン scapular plane)での挙上があります。

肩甲骨面での挙上は鳥口肩峰アーチの最高点付近を大結節が通過するため、上腕骨の外旋を伴わずに挙上することが可能な位置です。

また上腕骨の後捻が関節窩と一致するため骨性の安定化が得られます。

肩甲骨面挙上の角度は変化する〜スキャプラプレーン scapular planeとは〜

外転肩甲骨面

どうすれば肩甲骨面挙上〜スキャプラプレーン scapular plane〜になる?

Donald(2012)の筋骨格のキネシオロジーでは肩甲骨面は前額面に対して前方に約35度向いているとされており、上腕骨をこの分だけ水平内転をすることで関節窩と骨頭が一致します。

しかし挙上時には肩甲骨が肩甲上腕リズムによって1:2の割合で動くため、肩甲骨面挙上に必要な水平内転(以下HA horizontal adduction)角度は随時変わっていきます。

高濱ら(2003)は、肩関節挙上と肩甲骨面の関係について、挙上30度ではHA30度、挙上60度ではHA45度、挙上90度以降ではHA約60度で肩甲骨面と一致するとしています。

またこの角度は日常生活で利用しやすく、関節適合性や筋効率が良いためスポーツ場面へ応用できる可能性を示しています。

実際に肩甲骨面挙上をやってみるとこんな感じです。

肩甲骨面30

肩甲骨面45

肩甲骨面60

肩甲骨面602

自然挙上とスキャプラプレーンscapular plane

面白いことに肩甲骨面での挙上は自然な肩の挙上とほとんど一致していると標準整形外科学で鳥巣ら(2005)はしており、

これを検証した川井ら(2008)の「肩甲骨面挙上と快適挙上の運動軌跡について」では2つに相関があったことを示しています。

臨床で考えると肩関節痛が強い症例や円背によって肩甲骨アライメント変異が強い症例でコントロールが難しい場合、

activeやactive assistで快適な方向へ挙上を行ってもらうと肩甲骨面挙上にうまく誘導できるかも知れません。

まとめ

まとめ:大結節を鳥口肩峰アーチにimpigementさせず骨性の安定化を得るため肩甲骨面挙上を行う。

なお肩甲骨は動くため水平内転で角度を調整しながら肩甲骨面挙上を行う必要がある。

知識を効率よく吸収するなら、良い本を読もう!

肩関節のリハビリテーションをお粥になるまで、ドロドロに噛み砕いてれた本。めちゃくちゃ分かりやすいです。

上肢の整形疾患ならこの本を押さえておけば間違いないです。ポイントを押さえて学ぶことができます。

参考にした文献

Donald A.Neumann,カラー版筋骨格系のキネシオロジー原著第2版,島田智明(訳)有馬廣美(訳),医歯薬出版,pp.168,2012.

高濱照,壇順次,肩関節の構造・機能の研究と理学療法,理学療法20(7),pp.763-769,2003.

鳥巣岳彦 他,標準整形外科学第9版,医学書院,pp.363,2005.

佐藤信一他,肩甲骨面挙上と快適挙上の運動軌跡について:肩関節水平内転角度を中心に,理学療法基礎系,一般演題(ポスター発表演題),第43回日本理学療法学術大会,2008.