ひとくちにARCR(鏡視下腱板縫合術)と言っても、実は色々な修復方法があってどうやって縫っているのかが違います。
なんせ1990年頃からはじまった手術なので、成長途中。
どんどん新しい技法が世界で生まれて、日本に入ってきます。お互いいいとこどりで革新していっているでの、変法も多いようです。
ARCRの術後に関わる理学療法士としては、この術式によって再断裂の部位や頻度が違ったりするので、興味津々。
なにより術者の手術に対するニュアンスと言いますか、細かい部分の意識が知れるので、ある程度の術式に対する知識が必要なんです。
なにが良くて、なにがダメなのか。プロトコールだけでは分からないことってあります。
ということで、今回は標準的な4つの方法をまとめてみました。
sin-gle row 法
目次
画像引用:スキル関節鏡下手術アトラス 肩関節鏡視下手術(編)米田稔(監)越智光夫
腱板を一つのアンカーで「点」で支える方法です。
single row法はfootprintの形成を考えると十分ではなく、深層の修復が困難な場合があります。
ただし侵襲が少なくて済むメリットもあります。
double row 法(dual-row法)
画像引用:スキル関節鏡下手術アトラス 肩関節鏡視下手術(編)米田稔(監)越智光夫
腱板を2つのアンカーで「点」で支える方法です。
double row法は修復腱板の初期固定力をより高める目的で開発されてきました。
またsingle row法で修復困難な全層断裂にdouble row法での修復が適しています。
しかしdouble row法は内側アンカー周囲に応力が集中して再断裂を生じることがあることが指摘されています。
double row法とsingle row法の後ろ向き研究では、術後成績に差はないですが腱板の修復状態はdouble row法が良いと報告もありますが、
修復状態にも差は見られなかったとされる文献もあるようで、真偽は定かではありません。
dobuble an-chor footprint fixation(DAFF)法
画像引用:スキル関節鏡下手術アトラス 肩関節鏡視下手術(編)米田稔(監)越智光夫
上の2つの問題点を解消するために近年開発されたのがDAFF法です。糸で上から圧着させることでフットプリント(腱をくっつける場所)に「面」で圧着させます。改良されてるだけあって成績良好です。
内側アンカーに負荷がかからないように、結んでいないのがポイント。
ただ完璧というわけではなく、大結節外側アンカーにストレスが集中するため、力学的に不安定との指摘も受けています。
このためか色々な先生が変法で改良を加えているようです。
suture bridge法
画像引用:スキル関節鏡下手術アトラス 肩関節鏡視下手術(編)米田稔(監)越智光夫
こちらのsuture bridge法は内側アンカーの縫合糸を使って遠位部の腱組織を「面」で圧着する方法です。
DAFF法は内側のアンカーに結び目がないのに対して、こちらは結びます。
DAFF法と同様に良好な成績が報告されていますが、結び目があるため応力が集中するのか、内側アンカーでの再断裂が報告されています。
こちらも糸を変えたり、新しい変法がでてきているようです。
ついでにARCRの手術中の豆知識
- 腱板が再断裂すつとき割けるように切れるのを「チーズカット」と言うそうです。
- 内側アンカーから通す糸は筋腱移行部を狙うのがポイント
- 腱板が圧着されるフットプリントの表面は、あえてガリガリと削っておいて線維軟骨を作りやすくして、筋と骨が馴染みやすくしている。
ARCRの詳しい術式を勉強するならこの本がオススメ
ARCRの詳しい術式の違いはこの本にかかれています。今回もかなり図をお借りしました。
整形外科医が学会とかで買う本なので、値段が高いですが他にない情報ばかりです。本質まで勉強したい方はどうぞ。
参考文献:
(監)越智光夫(編)米田 稔,スキル関節鏡下手術アトラス肩関節鏡下手術,文光堂,2010.