前回の記事で鳥の眼は動かすことができないから頭を動かしますとご紹介しました。眼が動かない理由は人間にはない強膜輪という骨が関係しています。
上の画像はSOIL-SHOP 生物教材製作所さんからお借りしております。動物の骨を丁寧に解説されている素晴らしいサイトです。
鳥の眼球には人間と違って眼窩の中に強膜輪という円状の薄い骨があります。人間にも強膜(白眼の部分)が眼の保護のためにありますが、魚類や爬虫類や恐竜などでは薄い骨となってより強固に眼を守っています。これは進化の中で大きな眼球を水圧や風圧といった環境に適応させるためと考えられています。
安定性と自由度はトレードオフの関係にあることが多いですが、眼窩が深く骨で蓋をして安定させたため動きにくい理由の一つです。他にはもいくつか理由があります。
- 目が球体ではなく扁平な形をしている
- 頭に割に大きすぎて動かすのが非効率的
- 頸椎が16~25個と多く可動しやすい構造になっているため
人間の強膜輪はどこにいってしまった?
この強膜輪は哺乳類といくつかの生物以外には、ほとんどあるのが面白いところです。どうやら海から陸に上った段階ではどの生物も強膜輪があったようなのです。強膜輪をなくしてしまった生物は哺乳類と蛇とワニです。どこに共通点があったのでしょう?
答えは夜行性です。夜行性で眼が退化したため維持するための強膜輪が必要なくなりました。哺乳類は聴覚と嗅覚、蛇は熱(赤外線)を感知するピッド器官を発達させ、ワニはISO(外皮器官)とよばれる人間の指先より敏感な皮膚を発達させました。
でも人間は眼が見えるよね?って思った人素晴らしい!一度退化してまた日中活動するようになったため眼がもう一度進化したようなのです。夜間に活動していたのは当時の絶対王者「恐竜」と鉢合わせないためと言われています。恐竜の多くは昼間に活動していたのでチョロチョロ動いていたらパクっと美味しく食べられちゃいます。
ちなみに一般的に強膜輪は眼窩に対して昼行性の動物で小さく、夜行性の動物では大きいです。これを利用して恐竜の化石を調べることで夜行性の恐竜がいたことが分かってきています。
哺乳類の眼が発達したのは運良く大きな隕石が落ちた後です。体の大きくて餌をよく食べる恐竜から絶滅していき、やがてダチョウのような大型の鳥類が青春を謳歌する世界となりました。しかし鳥の天下は長くは続きませんでした。
哺乳類はティラノサウルスには逆立ちしても勝てなけど、鳥なら頑張れば勝てるんじゃないか?と思いました。日中でも活動できる眼を獲得し、やがて哺乳類の天下がきました。その結果、飛べない大型の多くは食べられてしまい、小型の飛べるものが生き残って大空へと羽ばたいて行ったのです。飛んで行く鳥の眼には3日天下を嘆く涙が浮かべられていたことでしょう。
参考にしたHP、本、教科書
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