進化からみた鎖骨の役割と叉骨

ティラノサウルスとカモメには共通点があります。

生きていた時代も場所も違う2種類ですが、ホントは似たもの同士なのです。

尖った歯がある?

鋭い爪がある?

肉食?

カモメ2

いえいえ、じつはどちらも鎖骨があるんです。

正確には叉骨(さこつ)と呼ばれるV字型の骨です、これは2本の鎖骨が癒合したもので鳥類はすべて持っています。

ではティラノサウルスは鳥なのでしょうか?なぜ鎖骨はつながってしまったのでしょうか?

謎は深まるばかりです。答えを探しに鎖骨の役割を進化から考えていきましょう。

鎖骨の数からみた生物の分類

まず鎖骨はすべての動物にあるわけではありません。鎖骨の数で分けると3種類となります。

  1. 鎖骨が2本ある     例:人間、猿、猫
  2. 鎖骨がない       例:基本的に4足歩行の動物
  3. 鎖骨が癒合して一本   例:鳥、ティラノサウルスなど恐竜の一部

それぞれ上肢の使い方によって役割が異なっています。順番に見ていきましょう。

鎖骨の役割① 鎖骨が2本の人間の場合

鎖骨

人間や猿は手を使ってモノをつかむことができます。猫や犬も頑張れば2本足で立つことができますが、そのままバナナの皮を剥いて食べることはできません。

2本ある鎖骨は突っ張棒のような働きをしていて上腕骨を胸郭の外側に押し出しています。だから腕と胸がぶつかることなく大きな動作ができます。

特に肩甲骨で代償できない水平内転は鎖骨の動きが大きく関わっていて、抱きかかえるような姿勢に役立っています。子供を抱くのも木に登れるのも鎖骨が役立っています。

鎖骨の役割② 鎖骨がない犬の場合

犬

4足動物の多くは鎖骨がありません。これも意味があってショックアブソーバーとして機能しているためです。

犬など4足動物は後ろ足で蹴り出し前脚で着地して走っており、体重の何倍もの衝撃を前脚で受けます。

衝撃は前脚から肩甲骨へ走っていきますが、肩甲骨は胸郭の上に浮いているので衝撃が吸収され脊柱や内蔵にダメージ伝わらないようになっています。

また鎖骨は荷重に弱い部分です。人間では鎖骨骨折が骨折全体の10〜15%を占めるほど多く、このことから脆いことがよくわかります。

ですから4足歩行に向かず、進化の過程でリストラされてしまいました。世知辛い世の中です。

しかし例外もいて4足動物でも猫だけは特別で小さな鎖骨が残っています。

猫パンチでワニを迎撃できるのも、木に登れるのも退化しきってない鎖骨のおかげなのです。

 

鎖骨の役割③ 鎖骨が1本の鳥の場合

鳥叉骨

生物学上は鳥は恐竜とされていて、ティラノサウルスなど獣脚類と呼ばれる恐竜の子孫です。実は恐竜は姿を変えて生き残っていたんですね〜

だから共通して叉骨(さこつ)とよばれるV字型の鎖骨があり、これが進化の親子関係の証拠になっています。

しかしなぜV字に癒合してしまったのでしょうか?これは羽ばたくことに都合が良かったからなんです。

翼を大きく動かす動作は水平内転と水平外転の繰り返しです。鳥は強力な水平内転で体を宙に浮かす推進力を得ています。

大きな大胸筋を手に入れるため胸骨に竜骨突起とよばれる隆起があるくらいです。

では水平外転はどうかというと、ここで叉骨が鍵になってきます。

叉骨は強力な水平内転で閉じられた翼をバネのように弾いて広げる役割をしているのです。

重くて強力な外転筋肉よりも叉骨で水平外転を補助するほうが軽量かつ省エネなので進化の荒波の中で選択されたたのでしょう。

 

同じ鎖骨といっても動物によって役割がずいぶんと違います、今週末は博物館で鎖骨を眺めてみてはいかがでしょうか?

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