転子部骨折の内・外側骨片の分類と整復のポイント

転子部骨折で注目するべき点のひとつに髄腔内に骨折部が嵌入(telescope)を起こすかどうかがあります。

骨折部がある一定以上の嵌入を起こすといることは、骨頭のCutoutの危険性や骨折部の不安定性を意味します。この評価のためにTAD(Tip apex distance)などx-pの評価があるわけです。

今回はこのほかに宇都宮分類とよばれる骨片の内側・外側転移の分類を、PT目線でポイントを絞って簡単に紹介したいと思います。

ポイントは骨片が海綿骨の中に入っているかどうか

宇都宮分類

画像引用: 鈴木聖裕ほか,大腿骨転子部骨折の分類と整復法-回旋転移に注目して,-関節外科25(3),pp.342-345,2006.図1より (英字は加工して追加)

上の図は鈴木聖裕ほか,大腿骨転子部骨折の分類と整復法-回旋転移に注目して(2006)より引用させて頂いたものです。

これは骨模型をa内側型、b外側型(内反型)、c外側型(外板型)に分類していて、cの形が整復後の望ましい形となります。

ポイントは皮質骨は固く、海綿骨は柔らかいということです。

aのように骨片が海綿骨に対して指すような位置で固定されると、スコップで穴を掘るようになってしまいズブズブと沈下する危険性があります。

逆にcのように内側前方の固い皮質骨がぶつかることで、落ち込みにストップをかけることができるのです。bでは皮質骨にひっかかっていないので止まりませんね。

なのでDrはCの位置で整復するためにヨイショヨイショと骨片を丁寧に外側に出してからスクリューで固定するのです。

CHSやγネイルの固定力によっても左右される

もちろん固定力によっても結果は左右されます。

昔から使用されているCHSやDHSなどに比べると、髄内釘タイプのγネイルやPFNAなどは固定力が優れているのため、少しくらい内側に骨片が入っていようと簡単には落ち込まないそうです。そんなこともりあり若手医師の手術スキルの低下をベテランDrが危惧しているとか。

まとめ

術後x-pの確認のときには内側骨皮質の外側に骨片がきているかを確認しましょう。

もし内側に骨片があったとしてPFNAなど強力な髄内釘なら問題ないことほとんどですが、CHSなどの従来の固定術のときは荷重練習など少し慎重になるといいのではないでしょうか。

参考文献

鈴木聖裕ほか,大腿骨転子部骨折の分類と整復法-回旋転移に注目して,-関節外科25(3),pp.342-345,2006.