距骨骨折の分類と壊死について調べてみた!人工距骨の可能性

距骨骨折は強力な外力で背屈を強制され、脛骨や腓骨に挟まって骨折する場合が多いです。

車でブレーキをかけたまま交通外傷とかがそううですね。

そのため周囲の骨を巻き込みながらの骨折もよく見られます。

またスノボーやダンスで外側結節などの突起がピンポイントで欠けることもあるようです。

臨床で出会う確率は骨折全体の0.22%と極めてレアなのですが、足部だけでみると5%程度と踵骨骨折の次に起こります。

癒合には6~10週かかり、状態によっては荷重をかけるのに年単位かかることもあり、これは解剖学的特徴に原因があります。

距骨骨折の分類と壊死について まとめ

距骨修正

画像出典:Anatomography 一部加工あり

距骨骨折の解剖学的特徴

距骨は全体の3/5〜4/5が関節面に覆われていて、血流が乏しく骨壊死が起こりやすい部位です。

なので数少ない栄養血管はとても重要で、ここが損傷していると骨壊死の可能性もでてきます。なので血管の走行を把握して、損傷していないか予想が必要になります。

さて距骨に栄養を与えている血管は3つあります。

  1. 後脛骨動脈 内側から三角靭帯を介して足根洞に入り足根管動脈として距骨体の栄養の大部分を担う
  2. 前脛骨動脈 距骨頚部の一部を栄養を担う
  3. 腓骨動脈 外側から足根洞に入り足根洞動脈として栄養を担う

下肢動脈

血流が途絶えていないかの判断はCTやMRIを使って判断しますが、あわせて伝統的な2つのスケールで状態を評価します。

距骨骨折の伝統的な評価

骨折する部位は頸部と体部に分けられています。

距骨底側からみて足根洞と外側突起の結ぶ線の前方にある場合は頸部骨折、後ろの場合は体部骨折です。

頚部骨折はHawkinsの分類

頸部骨折は関節外骨のため体部よりは血流があって予後良いです。骨片はHawkinsの分類を使って整理します。

体部骨折はMannの分類

体部骨折は関節内骨折のため血流が少なく、無腐性壊死を生じて予後不良な場合が多いです。しかし距骨後突起など端っこ骨折は保存で良好な予後のようです。

Mannの分類など使って整理します。

距骨骨折は血流が大事!骨壊死がおこりやすい理由

頚部・体部のどちらの分類もハデな転移があると周囲の栄養血管を損傷してしまいます。

こうなると血流の再開は見込まれず骨壊死になってしまいます。この場合はOPEで整復して血流の回復を祈ります。

Hawkins兆候

 術後x-pの特徴として距骨滑車の軟骨の下にうっすらと骨萎縮像ができます。

これをHawkins兆候の陽性といって血流の再開を意味しており、不動性の骨萎縮とうっ帯が原因で起こります。

これが確認できると血流が再開するので骨壊死の危険性が少なくなります。 

逆にこの時期に骨硬化像がでると陰性となり、血流の途絶を意味しています。

こうなると荷重時期のさらなる延長です。

x-pの経過

x-pは次の経過をたどります。

  1. 2~3ヶ月で(3~8週との記載もあり)Hawkins兆候の陽性
  2. 4~5ヶ月で距骨の硬化像(ボチボチとPWB開始)
  3. 6ヶ月〜骨梁の修復(様子を見てFWB開始)

あくまで血流不全例の場合です。十分な血流と支持性が確保できていれなもっとスムーズに進めれると思います。

治療

まずOPEの適応かどうか検討します。

転移が少ないと保存、転移が大きいとOPE適応です。

OPEの目的は以下の二つです

  1. 血流の再開による骨壊死の防止
  2. アライメント変化による外傷性関節症の予防

急性期を終えると、あとはしっかり免荷をして血流が再開するのを待ちましょう。

人工距骨

最近では人工距骨も臨床で使われ始めています。画像はナカジマメディカルさんからお借りしました。

これだけ壊死が多く荷重時期が遅くなると人工関節も十分選択の範囲内なのだと思います。長期的なレビューは分かりませんが短期的には良い成績のようで、高齢者の早期離床に期待できるのではと思います。

2016/3/14追記 リウマチなどによる変形性足関節症で除痛目的で使うのでは?と最近は考えてます。

image_01

画像出典:ナカジマメディカル

免荷時期が半年近くあり、PTとしてはヤキモキする疾患ですが根気よく癒合を待ちましょう。

早期介入の注意点としては骨折の転移です。距骨には筋がついていませんが、周囲の楔状骨や舟状骨には前脛骨筋や後脛骨筋が付着しており収縮は転移を起こしてしまうかも知れません。

効率よく勉強するなら、良い本を読もう!

骨関係の疾患だけをまとめて本。狭い分野でめちゃくちゃ分厚い本です。

参考にした文献、HP

プロメテウス解剖学アトラス 坂井建雄

標準整形外科学 鳥巣岳助

オーチスのキネシオロジー 山崎敦

骨折・脱臼 冨士川 恭輔

運動療法に役立つ 単純X線像の読み方 浅野 昭裕

骨折、距骨 – MDHealthResource 

距骨骨折の治療経験 – J-Stage

距骨骨折の治療経験 X線学的検討 長崎大学 小無田 要 他

ナカシマメディカル株式会社