運動イメージの一人称と三人称 ボクシングで例えてみた。

運動イメージ

運動をイメージすることによって脳は運動中と同じように運動前野・後頭頂葉・小脳などを活性化させます。この効果はイメージトレーニングとが普及していることからも分かるように、実際の運動の正確性を上げます。

実はこの運動イメージは三人称視点の「他人が運動をしているイメージ」と一人称視点の「自分が運動しているイメージ」に分けることができます。

人や場合によってイメージの形が違うって初めて知ったときは驚きました、夢を見るとき人によってはカラーだったりモノクロだったりと見え方違うと知った時と同じように衝撃でした。ほぼ同じ構造をしてるのに見えてる世界が違うんですよ?

一人称と三人称のイメージの違いは?

二つの違いは自分が外から眺る傍観者としてイメージするか、自分が運動を実行する当事者としてイメージするかの違いです。前者が三人称視点で後者が一人称視点ですね、運動学習に重要なのは後者の自分の体験としての感覚です。

頭の中の動きとしては長期記憶からワーキングメモリに動作の記憶を引っ張りだして関連する運動前野や小脳の注意を向ける作業です。PCに例えるとディスプレイを落としたままHDDからソフトを起動してメモリに移し負荷を掛けて様子を見る感じでしょうか。

PCだと単なる負荷ですが人間だと学習になるって人間って良く出来てますね〜

一人称は難易度が高い

しかし運動イメージは自分でやろうと思っても三人称的になってしまいがちです。これには運動の習熟度が関係していて、まったく経験していない運動三人称的になりやすく、ある程度の経験と認知的な理解がある場合は一人称視点でイメージが可能になってきます。

逆に言えばいつまでも三人称でいては運動学習に遅れが生じてしまいます。このイメージの概念に似ているのが 直接模倣と延滞模倣です。 

直接模倣と延滞模倣って?

ボクシング2

模倣は実際の運動を行いながら三人称的視点から一人称的視点に移行していきます。

ボクシングの練習で考えてみましょう。まずは右ストレート(ジャブは難しいので後回し)を教えてもらいます。会長が横についてお手本を見せてくれます。これを見ながらマネをするのが直接模倣です。

ボクシング

これに対して延滞模倣は教えてもらった右ストレートの運動イメージを頭の中で再現しながらシャドーボクシングを行うことです。この二つ模倣では補足運動野といった運動を企画・保持する前頭葉領域の活性が延滞模倣の方がより活動します。

鏡を使って自分の運動を確認しながら行うのがこの中間でしょうか(視覚的フィードバックと一人称イメージの混在)、さらに難易度を上げるのがジャブを追加で教えたり(競技上必要な運動イメージの追加)や右ストレートのミット打ちあたり(実際を想定した場面で実行)でしょう。

実際にボクシングを20年近く教えている会長(サムライ見たいな人です)に訊いてみると「ヘタクソはいつまで経っても鏡の前にいる、上手くなりたかったらリングに上がってシャドーとミット打ちをするといい。サンドバックも相手をイメージして叩くといい」とおっしゃってました。

すごく合理的な答えだと思いませか?体を動かして得た答えって理論を飛び越えて素晴らしいものだったりするんですよね。

まとめ

3人称視点は視覚的なので動作を見るだけでも出来るのでお手軽です。しかしそこだけに甘んじているといつまでたっても上達はしないので、自分で考えて動いて一人称視点の体験に基づいた練習をしたいですね。 

参考文献、HP

神経生物学入門 森岡周

脳・神経科学入門 森岡周

後頭葉 – Wikipedia 

基礎運動学 中村隆一