肝臓のジレンマ
ジレンマといえばハリネズミですよね。
今回はハリネズミの画像がなかったので猫にしました。猫の記事も書いてみたいですね〜
さて肝臓の働きに
- 消化管から吸収したアミノ酸から貯蔵タンパク質を合成
- 有毒なアンモニアを無害な尿素へ変換
の2つがあります。
アミノ酸の代謝過程でアンモニアが作られ、肝臓によって無害な尿素に作りかえられます。
しかし肝硬変など肝疾患の末期では、合成と解毒が難しくなってアンモニアが血中にとどまると肝性脳症の危険がでてきます。
カラダはアミノ酸を補給して必要なタンパク質を作らないと維持できません。
しかしアミノ酸を摂取すると代謝の過程でアンモニアが貯まる一方で肝性脳症に一直線です。
この矛盾した状況が肝臓のジレンマです。
結局治療としてアミノ酸を投薬するのですが、一般的なアミノ酸製剤ではなく特殊なアミノレバンという薬が使われます。
これはなぜでしょう?
BCAAとAAAってなんだろう?
ここで重要になるのがBCAAとAAAです。
これは両方とも必須アミノ酸で、食事などで補給するしかありません。
それぞれ特徴があって分岐鎖アミノ酸である BCAA(バリン・ロイシン・イソロイシン)は主に筋肉で代謝され、アンモニアの代謝に必要なグルタミン酸を作ります。
芳香族アミノ酸である AAA(フェニルアラニン・チロシン)は肝臓で代謝され、ドーパミンなど神経伝達物質の材料になります。
肝臓の能力が低下するとAAAは処理されにくくなりますが、BCAAは処理され続け少なくっなてしまいバランスが崩れます。
このバランスをフィッシャー比(BCAA/AAA)といいます。
フィッシャー比が崩れると、いつもBCAAと競合して十分に通れない血液脳関門を突破してAAAが脳に流れ込み、偽性の脳内神経物質となってしまいます。するとドーパミンやセロトニンなどの産生が抑制され肝性脳症として、うつ傾向など精神症状を起こしてしまいます。
だからバランスをとるためにBCAAを摂取する必要があるんです。
このBCAAを選択的に補給するのがアミノレバンなんですね。普通のアミノ酸製剤ではAAAも含まれており、非代償期まで移った肝硬変ではアンモニアが増えてしまいます。
食事も同様に低タンパク食が勧められます。
これもアンモニアをいたずらに増やさないためですね。
国家試験では肝不全には高タンパク食と書かれていましたが、一概にそうとは言えないわけです。
肝不全の初期には卵や大豆などBCAAが多く含まれているものが勧められます。
こうやって ハリネズミのジレンマと違って肝臓のジレンマは対応策があります。
ハリネズミにも幸せになって欲しいですね。
しかしハリネズミには、そんな刺々しく進化するなよ!猫みたいに爪とか牙が鋭くなっても良かったろ!
「全身に針があれば食べれないでしょ?」って日常生活に困りそうだろ!
と声を掛けたいです。
ハリネズミのジレンマとは
恋人同士になったハリネズミがお互いに近づこうとすると、お互いの針がささってしまい困ってしまう。
最後は傷つけあわない距離(身体?心?)をみつけるという泣けるハリネズミのお話し。
参考文献、HP
教科書 スタンダード生理学
教科書 コメディカルのための内科学