踵骨骨折の予後は大まかに2つの要因に左右されます。
1つ目は「関節内・外骨折のどちらか」です。踵骨の70%は関節内骨折であり、関節内は予後不良の因子です。
2つ目は「骨片の数はいくつか?」で骨片の数と部位によってSandersの分類で決められ手術の適応か判断がされます。これもよりバラバラ方が予後不良です。
この2つは踵骨骨折に限らずどこの骨折でも確認しないといけないポイントですよね。
もう少し踵骨に特化した見方はないのだろうか?と思ったので今回は整復後の踵骨骨折に焦点を絞って調べて、特にチェックが必要そうなポイントを3つあげてみました。
整復後の踵骨骨折のレントゲンでチェックする3つのポイント
目次
【踵骨骨折のレントゲンのポイント】1 ベーラー角(Bohler angle)の落とし穴
画像出典:Anatomography 一部加工あり
Bohler角やGissane角を探して関節面の形状をイメージしてみましょう。
ベーラー角は踵骨隆起から後距骨踵関節面を結んだ線と前距骨関節面と後距骨関節面を結んだ線 です。正常は20〜40度といわれています。
しかし整復前は後距踵関節の高さの低下を確認して踵骨骨折の有無の判断に有用なのですが、整復後では予後をあまり反映しないと言われています。
報告によっては角度の低下が腓腹筋の機能不全を引き起こすされているものもあり、踵骨隆起の扁平化による下腿三頭筋の緊張変化などが関係していると思われます。
Gissane角はあまり教科書には書かれていませんが海外サイトでよくお目にかかります。後距骨関節面と中距骨関節面の交差点の角度で95〜105度なので覚えておきましょう。
(※注意 100〜145度って記載も中国のサイトで見かけました。角度の幅が少ない方をメインで記載してます)
【踵骨骨折のレントゲンのポイント】2 踵骨の横径、外側壁の突出によるImpingement
画像出典:Anatomography 一部加工あり
アライメントで最も注意したいのが踵骨の横径です。踵骨骨折は高所から転落して起こることが多いので踵骨も横に潰れてしまいます。
踵骨の前外側はNeutral Triangleとよばれる骨梁の薄い部分があり特に外側に突出し易くなっています。
突出がおこると腓骨筋や腓腹神経が外果後方を通り踵骨側方を通るためImpingementや脱臼を起こしたり腱鞘炎を引き起こしてしまいます。
症状がひどければ距骨下関節の固定術やさらに距骨・踵骨の外側切除術に移行する場合があるようです。
【踵骨骨折のレントゲンのポイント】3 距骨下関節や踵立法関節の転移や陥没
足部のアーチを構成してる関節面の外反変化などは外傷性扁平足となる可能性があります。
他にもアライメントによっては足根洞症候群や距骨下関節症を起こしてしまう場合があるので、距骨下関節がどのような状態で整復されているか三次元的なイメージが大事です。
また骨折線が足根洞まで至ると炎症がおこり骨間距踵靭帯の伸張性低下が起こる可能性があります。
早期から内・外反で伸張性を維持をしたいでところです。
1と2は実行しやすいですね。
3は「ここが悪いから」と単純に言えなくて足部のアライメント全体をイメージして症状と照らし合わせる必要があります。
インソールや運動療法の適応、緩和的な対策を考えるとっかかりになればと思います。
知識を効率よく吸収するなら、良い本を読もう!
レントゲンの見かたはこれで覚えました。
下肢の整形疾患の要点はこの本にすべて書かれています。文句なしにおすすめ。
世界一美しい解剖学書。いつのまにか第3版が発売されていました。
参考にした文献、HP
]踵骨骨折・距骨骨折 – JABO 早稲田 明
骨折・脱臼 冨士川 恭輔
標準整形外科学
プロメテウス解剖学アトラス