視床は感覚の中継器として知られていますが、他にも多くの情報を伝えています。
外観は卵型をした一つの塊なのですが、複数の核で構成されていて、それぞれに役割があるためです。その核の数は文献によってさまざまなのですが、手元にある教科書を調べてみたところ12個(脳卒中理学療法と理論と技術 2013)、120個(プロメテウス解剖学アトラス 頭頸部/神経解剖 第2版 2014)、50個(カンデル神経科学 2014)といった結果でした。
この違いは代表的なものをPickupした場合と詳細な数まで記述した場合の違い、つまり著者の好みだと思っています。今回はこの中から特に重要なものをいくつか挙げてみました。
では視床の核の代表的なものをチェックしていきましょう。
視床の機能まとめ
目次
視床の主な核と役割
画像出典:Thalamus – Wikipedia
まずこの絵は右の視床を外側上方から眺めているものです。前方が黒、外側が黄色、内側が赤色に塗り分けられています。海外版のwikiからお借りしてきました。
前核郡 黒い部分
A核(前視床核)情動や記憶
「海馬→脳弓→乳頭体→A核→帯状回→以下ループ」となるPapez回路の一部を形成しており情動、新しい記憶、学習に関係しています。
内側核郡 赤い部分
DM核(背内側核)情動
赤色の上側の部分です。
「前頭連合野→橋核→小脳半球部→DM核→以下ループ」という認知ループあります。前頭葉や嗅覚に関係する辺頭葉と連絡線維があります。
内側核郡の経路が障害されると自制が失われ、子供のように癇癪を起こす前頭葉症候群が引き起こされます。
CM核(正中中心核)意識レベル
視床の中心付近にあり、残念ながら図では確認することが出来ません。CeM核とも書かれます。
脳幹網様体からCM核に中継される上行性網様体賦活系(ARAS)の重要な構成要素です。ARASは外界からの刺激を大脳皮質に届けて覚醒状態を維持する重要な役割を果たすため、損傷すると意識レベルの低下が起きます。
外側核郡 黄色い部分
VA核(前腹側核)運動調節
「補足運動野、運動前野、運動野→橋核→小脳虫部、中間部→VA核→以下ループ」という運動ループがあります。
線条体、運動前野、補足運動野と中継しており、運動野の活動に影響しています。
VL核(外腹側核)運動制御
小脳と連絡しており、一次運動野、運動前野、補足運動野に相互連絡しています。
VAとVLを合わせて視床運動核と呼びます。基底核と小脳の刺激を受け取り総合的な情報を運動野に送ります。
VP核(後腹側核)体性感覚
感覚線維の上行性線維がニューロンを変えるところで、ここから内包後脚を通り感覚の中枢である中心後回に情報を伝えます。
VPM(後内側腹側核):三叉神経系の感覚入力があるため顔面の体性感覚に関わります。
VPL(後外側腹側核):四肢、体性体幹の感覚 ここの損傷の10%確率で視床痛を引き起こします。
背側核郡 黄色のPulvinarの部分
MG(内側膝状体)聴覚
聴覚とか変わっており、ニューロンを切り替え聴放線となって一次聴覚野に連絡します。
LG(外側膝状体)視覚
視覚に関わっており、ニューロンを切り替え視放線となって一次視覚野に連絡します。
まとめ
視床は運動ループ、感覚ループ、認知ループなど複数の中継箇所であり、情報の統合場所なので、例えば「視床出血」の方を担当してもどこの核がやられているのかを臨床症状とあわせてチェックしてみましょう。
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参考文献
Eric R.Kandel(編)他,カンデル神経科学,,金沢一郎(監),宮下保司(監)pp.357-365,2014.
脳卒中理学療法の理論と技術,メジカルビュー社,pp308-309,2013.
Michael SchÜnke他,プロメテウス解剖学アトラス 頭頸部/神経解剖第2版,坂井建雄(監),河田光博(監),pp.290-291,2014.
渡辺正仁(監),理学療法士・作業療法士・言語聴覚士のための解剖学,廣川書店,PP274-275.