腰痛を訴えてリハビリ希望で病院を受診した、とある患者さんの症状です。
これに近いケースを最近体験しました。
みなさんならどんな風に評価するでしょうか?
脊索腫というレッドフラグがあることを知っておこう!
(症例1)30歳, 男性, (主訴)腰部の鈍い痛み
(現病歴)ここ数ヶ月腰部に鈍い痛みが出現. 放置していた。腰痛は第4腰椎~第5腰椎にあり, 圧痛点は特にない. 夜間時痛などもない. 深部腱反射は正常, SLRT, FNSTなどもなく, 知覚異常, 運動障害なども認められない.
血清生化学検査はすべて正常, CRP, 血沈も正常範囲内であった. (画像診断)レントゲン上, 腰椎に特別な異常は認めがたかった. 強いていえば第4腰椎の椎体部の骨梁陰影のわずかな増強がretrospectiveな観察で認められた.
よくある患者像が思い浮かびませんか?
何も知らなければ、ひととおりの評価を理学療法士視点からすることになると思います。
でも、この患者さん。CTとMRIで撮影すると、
第4腰椎の脊索腫の診断を受けることになります。
腰椎CTにて第4腰椎に骨硬化像が認められた. MRIにて第4腰椎の椎体部~椎弓根にかけてT1強調画像にてlow,T2強調画像にてhighのSpace Occupied Lesion(占拠性病変)が認められた.
引用:吉井一郎, 本田勝定,Chordomaと診断された第4腰椎椎体部腫瘍の1例,中国・四国整形外科学会雑誌 10(1): 129-129, 1998.
脊索腫ってなに?
画像引用:市民のためのがん治療の会
画像は仙骨の脊索腫です。
脊索腫は、200万人に1人程度の頻度で仙骨などに発生する胎児期の脊索の遺存組織に由来する腫瘍のことです。
仙骨50%、頭蓋35%、その他の脊椎が15%の頻度で診られる稀な疾患です。
性差は男性に多い傾向があり、30代から50代に後発します。
頭蓋内のは早期から脳神経症状でわかることが多いのですが、
仙骨は腰痛、坐骨神経痛など訴えから画像をとってみると、
大きくなった腫瘍が発見されるケースもあるようです。治療は腫瘍の摘出手術や放射線治療が選択さてます。
レッドフラグに敏感になる
正直、普通なら気づかない疾患ですよね。
こんな症例もあると知っておくことが重要だと思います。
僕は整形のDrが気付いて理学療法指示がでなかったので、よかったのですけど
もしDrの目をすり抜けて、こんな状態なのに筋骨格系の治療をしていたら、、、、
なんて思うとゾッとした症例でした。
参考・引用文献
吉井一郎, 本田勝定,Chordomaと診断された第4腰椎椎体部腫瘍の1例,中国・四国整形外科学会雑誌 10(1): 129-129, 1998.
総編集 鳥巣岳彦ほか,標準整形外科学9版,医学書院,pp.322,2005