紹介する文献は2007年に関西理学療法に掲載された「右大腿前外側の異常感覚により端座位保持困難で あった腰椎椎間板症患者の一症例」です。著書は安井先生ほか4名の方で書かれています。
まず研究内容。表題とおりです。
本症例の診断名は腰椎椎間板症であり、腰椎椎間板 症の症状が消失しても右大腿前外側の異常感覚が残存した。
<中略>
本症例では長期的に不良座位姿勢をとって おり、この不良座位姿勢が右大腰筋の過緊張(筋短縮を含 む)を生じさせた結果、外側大腿皮神経を絞拒したと仮説を検討した。
腰痛と不良姿勢はきっても切り離せないもの。
高位診断とあわない異常感覚の原因の一つとして、十分可能性があると思います。
症例は22歳の女性で、X年腰痛悪化にて当院を受診 し、腰椎椎間板症と診断され安静目的で入院となった。
症例さんはお若い方です。比較的若い方に神経症状がでた場合って大きくADLを制限して、安静にしてるとADLが回復してくるのに対して、
高齢者はしびれの訴えは強くても、異常感覚でても急激にADLのが制限されることは少ないイメージです。
工藤(慎太郎)らは大腰筋の筋緊張:充進や筋短縮が外側大腿皮 神経の絞据因子になることを報告した。
工藤先生は「運動器疾患の「なぜ?」がわかる臨床解剖学」で有名ですよね。
こっちは持っていて、病理に沿った解剖学の本は貴重なので重宝しています。
こっちはまだ買っていないんですけど、欲しい、、、
閑話休題。
ということでコチラの文献をベースに実際で臨床で試してみた文献なので、原著まで遡ってみました。
考察の内容はコチラ。
工藤慎太郎・他:外側大腿皮神経の絞拒性神経障害に関する 局所解剖学的検:討一下肢放散痛に対する保存療法の可能性に ついて一.理学療法学 33:301,2006.
絞掘性外側大腿皮神経障害は、同神経支配域である大腿外側か ら前面の痺れ・放散痛が主症状となる。
今回、外側大腿皮神経 の腰神経叢からの分岐部近傍の局所解剖学的研究から、同神経 が腸骨稜の高さで分岐した後、大腰筋を貫通し、腸骨筋前面を 斜走する例が観察された。
これらのことから、大腰筋の短縮や 筋緊張の日進とそれに伴う骨盤の前傾・腰椎の前弩の増大によ り、同神経に対するftiction・forceが増大し、同神経支配域に痺れ・ 放散痛を生じさせることが示唆された。
したがって、大腰筋の 伸張性の向上、骨盤・腰椎のアライメントの是正等の保存療法 が腰部疾患などで生じる同神経支配域の痺れ・放散痛に対して 有効になる可能性が考えられた。
ふむふむ。大腰筋の短縮と緊張が外側大腿皮神経を絞扼するの可能性は、屍体解剖からわかったんですね
画像引用:右大腿前外側の異常感覚により端座位保持困難で あった腰椎椎間板症患者の一症例
実際の生体ではどうなんでしょうか。
安井先生にもどってみましょう。次はなぜ、大腰筋のか活動が起こったのか、
初期評価より本症例ではまず腹筋群の筋緊張低下(特 に右側)により骨盤は後傾し、特に右寛骨は左に比べ後方 回旋していた。さらに骨盤右挙上位であり左坐骨に多く 荷重していた。またこれに伴い腰椎は後光、右回旋、右 側屈位での姿勢保持をおこなっていた。本症例において は、上記のような下部体幹が左後方へ崩れた不良座位姿 勢となり、この崩れを右大腰筋が過剰に活動することで 姿勢を保持した結果、右大腰筋に過緊張が生じたと考え られた。そして、この右大腰筋の過緊張により外側大腿 皮神経が絞拒され右大腿前外側に異常感覚が出現したと仮説をたてた。
そこでこの仮説をもとに本症例では腹筋 群の調整とともに不良座位姿勢を改善することで右大腰 筋の過緊張を改善すれば異常感覚が軽減できると考え、 治療Aを実施した。
不良姿勢のため、安定化させるためにあえて大腰筋が頑張ったのでしょうか?
これに対して治療を実施。
まずは骨盤前後傾中間位での両坐骨支持にて端座位をとり、そこからセラピストによって前後 左右への重心移動をおこなった
治療Aは座位アライメントを考慮した、端座位での重心移動練習による腹筋群の緊張調整です。
これは若干の効果のみでした。ですので治療Bとして大腰筋のストレッチを開始。
再検討を踏まえて治療Bでは、右大腰筋の筋短縮を改 善する目的で腹臥位での他動的な右側股関節伸展による ストレッチングを実施した。続いて不良座位姿勢を改善 する目的で、端座位にて前後左右への重心移動をおこない、腹筋群の筋緊張調整を実施した。
こちらで端座位保持時間の大幅な改善がみられました。
大腿外側の異常感覚の方を診るときは、少し考慮してみてはいかがでしょうか。