皮質脊髄路を脳画像で確認してみよう!

前回は中心溝の位置を確認しました。今回は中心溝から皮質脊髄路をたどってどの部位が障害されたら運動麻痺がでるのかを確認してみましょう。

「錐体路が障害されたらどこでもでるんじゃない?」て言われそうなのですが、実際には損傷される部位によって麻痺がでたりでなかったりしますよね。

ということは、なりやすい部位とそうでない部位があるはずです。

今回は錐体路の重要なポイントを確認していきましょう。

皮質脊髄路の脳画像と特徴まとめ

重要なのは中継核と連絡線維が密になっている部分

運動線維も感覚線維もそうなのですが中継核が損傷されると重度の損傷を受けます。これに対して連絡線維の部分は機能が比較的に温存されやすいです。

しかし連絡線維も密になっている部分と疎になっている部分があって、密になっている部分は損傷を受けると大きなダメージが残ります。

つまり神経繊維が集まっている部分は特に注目するべき場所となります。次は順番に皮質脊髄路で運動繊維が密になっている部分を見ていきましょう。

皮質脊髄路の運動繊維を追ってみよう

ホムンクルスの輪切り

まずは皮質のホムンクルスを思い出してみましょう。

この運動のホムンクルスがあるのが中心前回です。一般的に皮質から神経線維が下降していって放線冠→内包→大脳脚を通り、延髄で交差した後に80%は対側、20%は同側を下降するとされています。

この神経線維の通り道は下肢、体幹、上肢、顔面とそれぞれ決まっていて、この通り道を脳梗塞などで障害されると、これに対応した部位が障害されます。なので予後予測にはどこにをどの神経線維が通っているのか知っておく必要があります。

予後予測の例

例えば下肢の神経線維の通り道が脳梗塞になったとしましょう。対側下肢の機能が予後不良なのは予測できますよね。

ここで身体症状と比べてみると対側下肢だけでなく対側上肢や体幹まで麻痺症状がでていたとします。これでは脳画像と実際の症状に矛盾が生じてしまっています。

この場合、上肢や体幹はペナンブラ(脳梗塞の周囲の組織が一時的に機能不全を起こしている状態)や脳浮腫による神経線維の圧迫などが予測できます。

画像を再確認して、実際そうだった場合は上肢、体幹の症状は一時的なものなので予後は良好であると予測できるわけです。

ホムクルスの色分けと水平断について

画像は分かりやすくするために足を赤色、体幹を黄色、上肢を青色、顔を青色に塗っています。次に出てくるCT画像の絵でも神経繊維が通る位置に色をつけているので確認しながらみてみてくださいね。

ホムンクルスを輪切りにしている3種類の紫色の線は、水平断のレベルをあらわしています。これをみるとカットする位置によって現れる部位が異なるのが理解できると思います。

それではスライスをみていきましょう。

皮質レベル

皮質レベル

水色の太いラインが中心溝ですが、まず前回勉強した方法で中心溝を探してみましょう。

とはいったものの、思ったより一つ上のスライスで書いてしまったため中心溝が探しにくい画像になっています(笑

しかしよーく見ると逆Ω型の凸部分が外側にきているのがわかります。外側凹部分は見きれてしまっています。

中心溝の一つ前が中心前回で、一つ後ろの中心後回より太いのが確認できますね。機能局在が内側から下肢、体幹、上肢と並んでいます。

半卵円レベル

卵円孔レベル

皮質のホムンクルスを出発した放線冠はだんだん内側に集まりながら下降していきます。この半卵円レベルになると顔面の支配領域が外側に顔を覗かせます。

このレベルでは神経線維がまだ、まとまりきっていないので予後は比較的良好です。

側脳室天井レベル

側脳室天井レベル

 

側脳室が見える頃には線維は集まっており、皮質レベル〜半卵円レベルでは横並びだった線維がひねりが加わり縦並びになっています。このまま内包にむかっていきます。

モンロー孔レベル

モンロー孔レベル2

 

視床とレンズ核と尾状核に囲まれたくの字型の隙間が内包です。顔面は内包膝をとおり、上肢、体幹、下肢の順番に内包後脚を通ります。

ここまでくると神経線維はかなり密集しているので、損傷が起こると比較的重度の麻痺が起こります。

中脳レベル

中脳レベル

ミッ○ーのように見えるのが中脳で耳の部分中脳大脳脚になります。この耳の中1/3を皮質脊髄路が下降しており、とても密な線維のため重度の麻痺を生じます。

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2枚目の画像は中脳の拡大図で赤い部分が皮質脊髄路の通過場所です。

橋レベル

橋レベル

再び小さな束ににバラけるのでこのレベルの皮質脊髄路の損傷は予後良好です。

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2枚目の画像の赤い部分が皮質脊髄路の小束です。細かく別れて通っているのがわかりますね。

まとめ

以上が皮質脊髄路の重要なポイントになります。上の方に書きましたが予後予測をする際は実際の神経症状と照らし合わせながら矛盾がないかチェックしましょう。トレーニングをするなら画像から実際の症状を予測したり、逆に身体症状から画像を予測してみると良いです。

しっかり練習して脳画像の苦手意識をなくしていきましょう!(自分に言い聞かせてます。。。)

知識を効率よく吸収するなら本を読もう!

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参考文献、HP

原 寛美 (編集), 吉尾 雅春 (編集),脳卒中理学療法の理論と技術,メジカルビュー社,pp300-305,2013.

e-Anatomy 人体解剖学: 医療画像処理とイラスト – IMAIOS