腰椎6番についてまとめ
目次
先日とある患者さんがL1圧迫骨折で入院してきました。
それでPT指示が出たのでカルテを確認したのですが、Drのカルテに一言気になる言葉が書いてありました。
「L1圧迫骨折。L6まである」
はて、L6?
いやいや先生、腰椎は5番までですよ。学生でも知ってます。
またタイプミスですか!と失礼なことを思いながらも骨折部位確認のため画像チェックします。
うん、L1しか折れてなさそうです。
でも心なしか腰椎の前弯が長いような気がする?
、、、、
まさか本当にL6があるってこと?
では確認、腰椎を下から数えてみましょう。これが仙骨でしょ。L5、L4、L3、L2、L1、ん?
そこには腰椎前弯の終着点前にもう一つの椎体。そんなことがあるの?
でもこの評価は正確じゃないよな。Th12はまだ浅く前弯しているはずだしTh12と見間違えたかも。
なのでL6が存在することがあるのか?また評価方法はどうすればいいのか?を調べてみました。
腰仙部移行椎の特徴①どのくらいの確率で存在するの?
たしかに幻のL6が存在する方はいらっしゃるようです。調べてみたところ文献的な記述は「第6腰椎」や「L6」ではなく、「腰仙部移行椎」と呼ばれています。腰仙部移行椎にはL5が仙椎化するタイプとS1が腰椎化して腰椎が6個になるタイプがみられ、今回は仙骨の腰椎化が6個腰椎がある原因のようです。
森本ら(2010)の腰仙部移行椎と胸腰部肋骨の形態異常の関係を調べた研究では腰部ヘルニアのオペ適応となった411人のうち65症例(15.8%)で移行椎が見つかったとしています。海外の研究結果を紹介しているサイトさまも見つけましたがやっぱり似た数字になっていますね。
つまりちょっとした形成不全を含めるなら10人に1人の割合で形態異常があるようなのです。全然幻じゃないじゃん!しかしみなさん普段は特に問題なく過ごされており、今回みたいな骨折など腰部疾患で偶然発見されるようなのです。 知らなかった、、、
それでは次に評価方法ですが、正確に評価するならレントゲンを使って頚椎から順番に数えていくようです。しかし今回は頚椎まで全体に写っていませんでしたので簡易的に肋骨から判断してみました。肋骨はTh12までしかないわけですから次がL1のはず。なのでそこから順番に数えればL6があるか分かるという算段です。
(厳密に考えれば肋骨の形態異常の可能性もあるわけで、肋骨が12個あるか確認しないといけないわけです。今回は肋骨の全体像も見えなかったのでその可能性はそっとしておきます)
、、、
数えてみました。
やっぱり6個ある。
Dr、疑ってごめんなさい。私の勉強不足でした、、、
腰仙部移行椎の特徴②機能障害との関係
続けて機能障害に関係あるか調べてみました。腰痛の原因になるのかどうかはまだ議論が続いているようです。
詳しくは参考文献を辿って欲しいのですが1990年代には上位腰椎にすべり症になりやすかったと報告する文献もありましたが、2000年代の文献を漁っていると議論する余地は残っているものの、機能的な異常や腰痛には直接結びつかないといった考え方がスタンダードなっている印象です。近年の腰部痛と画像で見える機能異常が必ずしも一致しないという報告と合わせて考えても違和感のない結果ではないかと思います。
腰仙部移行椎の特徴③神経根の走行
少し調べていると腰仙部移行椎の神経根の走行について調べている文献がヒットしました。考えてみれば病態と症状を照らし合わせるのに支配領域は把握したいところ。
大平ら(1995)によると移行椎根の機能はL5やS1領域を支配している場合がほとんどのようで、特別にL6神経根がでて新しい領域を作るわけではなく、解剖学的に近い部位の神経根が混線しているのですね。いやー人体って不思議ですね。
効率よく知識を吸収するなら良い本を読もう
世界一美しい解剖学書。運動器の解剖学を網羅しているのでオススメです。
参考文献、HP
江原茂,『臨床画像』2013年1月号特集 単純X線撮影からみた骨・関節疾患の診断,臨床画像 29(9),pp.1128-1131, 2013.
角田,腰仙移行椎の形態的特徴と上位椎間への影響,整形外科と災害外科36(3),pp.809-812,1988.
角田,腰仙移行椎とその上位椎の辷りについて,整形外科と災害外科40(1),pp.256-259,1991.
藤田 泰宏,藤田 毅,腰仙部移行椎が疼痛の起因たりうるか否かの検討,整形外科と災害外科43(4),pp.1239-1242,1994.
森本ら他,腰仙部移行椎と胸腰部肋骨の形態異常の関係,整形外科と災害外科59(2),pp.279-281,2010.