今回は3次元有限要素法で腰椎を再現した研究など応力を研究したものを調べてみました。
なかでも注目したのは椎間板と椎間関節です。
腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症にストレスがどのようにかかるかを詳細にイメージできるようになるのは、アスリートなど繊細な治療や障害予防に役立つのではないでしょうか。
椎間板と椎間関節のどこにストレスがかかっている?
椎間板の場合
琉球大学の久山らはL4,5骨格模型(ポリエステル性)にゴムを挟んでモデルを作成し応力分布を解析した研究を行いました。
比較は通常姿勢、屈曲姿勢、伸展姿勢とぞれぞれ分けて計測されていて、結果はどれも背中側付近に高い応力(抵抗する力)を示しています。
作成されたモデルは靭帯や髄核までは再現されていませんが、腰椎ヘルニアの多くが背側に飛び出してしまうことになど力学的に関係しているのかもしれません。
画像出典:久山,仲宗根(2010)腰椎椎間板に負荷をかけた場合の応力分布解析-腰椎模型に対する圧縮応力の測定-図6,7より
髄核ありのモデル
髄核を再現した報告では鳥取部ら(1993)三次元有限要素法による腰椎応力解析(第二報:椎間板)があります。
画像出典:鳥取部ら(1993)三次元有限要素法による腰椎応力解析(第二報:椎間板)図1より
3次元有限要素法って小難しい名前ですが、ざっとググったところ腰椎みたいな複雑な物体を細分化したブロックとして考え、それぞれ数式で表現し計算する方法です。
組織ごとに硬度などパラメーターを調整してデータ上に再現し、実際には倫理上実施が難しい実験でも本物に近似したデータをとることができます。
3次元は立体的にとらえてますよとあらわしてていて、要は3Dで精巧に再現したイメージですかね?
閑話休題。このモデルを垂直に1mm圧縮するようにストレスをかけたところ、髄核周辺は垂直応力を示しましたが、線維輪外縁は垂直応力は低値となり伸長応力を示しています。これについて鳥取部らは次のように述べています。
これはモデルにした椎間板の形状が外側に膨隆していることから線維輪外縁は垂直応力が生じにくく髄核や線維輪内層で生じた圧縮応力を受け止めるように伸長応力を生じると考えられる。
中心付近は強く反発するけど周辺は引き伸ばされてるということですね。一概に同じ動きをするわけじゃないわけです。
椎間関節の場合
同じく鳥取部らが3次元要素法で椎間関節のストレスのかかり方を分析した報告があります。
画像はL4,5腰椎の椎間関節面です。屈曲した場合は上下ともに椎間関節の上方内側、伸展した場合は下方内側にストレスがかかります。
内側に荷重が偏奇するのは条件によって変化もあるようですが、関節面のカーブが内側で異なっているのが原因ではと鳥取部ら考察しています。
画像出典:鳥取部ら(1994)三次元有限要素法による腰椎の応力解析(第三報:椎間関節)図2、3より
あらためて腰椎関節面の形はどうなってる?
なんで腰椎の椎間関節は横を向き合っているのに屈伸で圧縮力がかかるの?と思ったのですが、よく見てみると関節面は真横を向いているわけではないので椎間関節に圧縮力がかかると思われます。
調べて思ったこと
腰椎のモデルを作っての研究は様々な分野(工学系?)でされていて聞きなれない言葉も多くありました。
脊椎分離症に関する力学的研究も多くされていてなぜL5に多いのか、どうして斜めに亀裂が入るのかなど研究されています。
しかしこれだけで記事がもう一つ書けそうな量なので今回は省略しました。またいつか書きたいですね。
参考文献
鳥取部 他,三次元有限要素法による腰椎応力解析(第二報:椎間板),整形外科と災害外科42(3),pp.1087-1091,1993
鳥取部 他,三次元有限要素法による腰椎の応力解析(第三報:椎間関節),整形外科と災害外科43(1),pp.142-145.
久山,仲宗根,腰椎椎間板に負荷をかけた場合の応力分布解析-腰椎模型に対する圧縮応力の測定-,琉球大学理学部紀要(90),pp.7-10,2010