片麻痺の短下肢装具「ゲイトソリューション」を病院に借りてみた。

勤めている病院では超高齢者の方が多く装具療法の対象になる方は少ないのですが、たまに急性期病院から転院で若い脳血管障害や脊損の方が来られます。

今回は短下肢装具の適応になりそうな方がいらっしゃったので、義肢装具士さんに相談して短下肢のゲイトソリューションを借りてみました。

脳血管障害を主な対象としている病院では、もう多く使われていると思うのですが優れものなのでご紹介します。

ゲイトソリューションってなんだろう?

ゲートソリューション2

 誰が作ったの?

山本澄子教授が20年以上前から片麻痺に対する短下肢装具を研究され、作成されたのがゲイトソリューションです。平成23年度に装具では異例の文部科学大臣表彰の科学技術賞(開発部門)を受賞されています。

山本澄子教授(2003)の「動作分析にもとづく片麻痺者用短下肢装具の開発」ではAFOに必要な機能として以下のの3つをあげています。

各片麻痺者に合わせた底屈制動

これを油圧ダンパーによって実現しています。これがゲートソリューションの一番の特徴じゃないでしょうか、前脛骨筋の遠心性収縮を再現し自然なHCからFFが可能になります。

立脚初期を補助してうまく接地できれば、立脚中期から後期にかけて良い変化が起きるのも納得できます。

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ちなみに油圧は小さな六角レンチでロックを外すと、ねじ回しで4段階に調整可能です。通常は上から2番目に抵抗の強い3で使用するそうです。

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背屈制動は不要

下肢の伸展パターンが起きやすことからも想像できるように、片麻痺患者さんでは底屈は回復しやいケースが多く、制動を補助する必要性が低いようです。

例外は頻繁に膝折れが起こる場合などでしょうか、この場合は短下肢装具の適応外の可能性もあります。

またアンクルロッカーを利用するためには足部の可動性が必要です。

足関節角度の背屈位設定

背屈は回復がしにくく、遊脚期のぶん回し歩行を学習させないためにもスムーズな振り出しが必要です。

 

以上の3点を満たした構造になっているんですね。ホント良く考えられています。

他にポイントはある?

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画像出典:ゲイトソリューションシリーズ | パシフィックサプライ株式会社さん

デザインってすごく大事

ゲートソリューションって見た目がかっこいいんですよね。思わずつけてみたくなるような形をしています。作成者の川村義肢株式会社さんでは、審美性や軽量化から油圧ダンパーを小型化し、普通の靴に入るように踵部のカットなど歩行機能だけでなく実用性を追求されています。

どうせ付けるならオシャレなのがいいですよね?

モチベーションに関わるこういった部分は医療業界にもっと広まってもいい気がします。市場評価で研ぎ澄まされたから進化していったんでしょうね〜。

しかしご利用は計画的に

良いことだらけのゲイトソリューションですがモチロン適応があります。

痙性が強く油圧ダンパーが最高設定の4でも底屈が制動できなければ、底屈は制限したほうが良いかもしれません。そもそも外科的治療やボツリヌスの対象であったりも考えられます。

装具を使用した運動学習が重要

ゲイトソリューションにここまで助けてもらったらあとは運動学習です。

脳卒中片麻痺患者を上手く歩かせる方法さんが良くまとめていらっしゃるのでオススメです。はじめてゲイトソリューションを扱うのにすごく参考になりました。

片麻痺患者さんの歩行の運動学習のポイントも卒中八策としてまとめられているのですが、踵接地の重要性を強調されています。 立脚初期をしっかり作り、動的な歩行が獲得できるように支援しましょう。

参考にした文献、HP

山本澄子,動作分析にもとづく片麻痺者用短下肢装具の開発,理学療法学,18(3),pp.115-121,2003. 

歩きやすさを求めて まったく新しい短下肢装具の開発 

ゲイト・ソリューション文部科学大臣表彰の快挙 | PT-OT-ST.NET 

歩きやすさを求めて まったく新しい短下肢装具の開発