関節可動域練習は拘縮を起こさせないように1日に数えきれないくらい行うと思います。
しかし実際どれくらい行えば可動域制限を予防することができるのでしょうか?
また関節可動域練習は効果的なのでしょうか?
今回はラットに拘縮を作り色々な検証を行った報告を調べてまとめてみました。
【拘縮予防のエビデンス】関節可動域運動と持続伸長
目次
他動関節可動域運動の場合
拘縮予防の報告はROM-exとストレッチが主です。
よく関節可動域を維持するには5回全可動域にわたって動かせば維持できると言われますが、龍田ら(2007)は1日5回の関節運動を週5回ラットに行いましたが拘縮発生を予防できなかったとしています。
この条件は週休二日制の病院に近いのではないでしょうか。
また翌年にも龍田ら(2008)はこれを発展した報告をしています。
1日5回1セットの関節運動は同様ですが、週5回だけでなく週3回、週1回と今回は比較対象を増やしています。
結果は予想通り5週>3週>1週で可動域制限は少なく頻度に影響されることが示されています。
この二つをまとめると、1日5回を1セットとした週5回の他動関節運動は拘縮を予防するほど効果はないが進行を遅らせることができるということが言えます。
画像出典:陣之内ら(2008)関節可動域制限を予防するために必要な持続的伸長運動時間の検討-ラットにおける実験的研究-図1より 固定されたラットの足
伸長運動(ストレッチ)の場合
伸張運動による拘縮予防の報告はwilliams(1990)がマウスの足部を固定して実験した「1日1回30分の伸張運動は拘縮を予防できる」という報告が多く引用されてます。
海外では後発の研究も盛んで脊髄損傷や脳血管障害の患者さんで行われており、完全な拘縮予防効果はないものある程度は効果があると言われています。
国内では遠藤ら(2008)がラットを使った実験で報告しており、1日1回30分の伸長運動は拘縮発生の予防に有効であるが完全でなく、1日2回30分の伸長運動は拘縮発生を認めなかったとしています。
関節可動域運動と同様で頻度を増やすのが効果的のようです。
しかし30分の2セットのストレッチとなるとセラピストがつきっきりは難しくプログラムを組んでやってもらうのが良さそうです。
画像出典:ストレッチ – Wikipedia
1日どれくらい自由にすると拘縮は起こらない?
小野ら(2012)はラットの足関節をどれくらい固定すれば拘縮ができるのかを報告しています。実験期間は1週間で右足関節を固定し、グループを次のように分けました。
- 一週間ずっと固定
- 一日12時間固定
- 一日8時間固定
- 一日4時間固定
結果、一日4時間固定を覗いてすべてのグループに関節拘縮がおこりました。
逆に言えば20時間自由に動かすことができれば可動域制限はおこらないということになります。
これは積極的な運動を行うというわけではなく、固定しないで普通に生活することをさしていて、いつもの動作に早く誘導してあげる方が可動域制限を起こさないと言えると思います。
日常の動作の中に組み込めるのがベスト?
予防ではないのですが経験的に整形疾患のギブス除去後なども普段の生活で制限のある部分が使用されはじめると、次第に良くなっていくケースが多いように思います。
また介護度が5のようなADL全介助レベルの方も個別の拘縮予防も大事なのですが、生活の中に離床の時間を長く作れると結果が良いケースが多いです。
なので私は医学的管理や環境、本人が許せばできるだけ生活の場で使ってもらえるのが良いのではと思います。
まとめ
拘縮の予防に関しては、そもそも制限が起こらないように自由に動かす>30分以上の伸長運動(ストレッチ)>関節可動域練習1日5回のようです。
しかし現実には関節可動域練習でどうにかしないといけない場面も多いと思うので、その時は1日に2~3回など頻度をあげて行うようにしてみましょう。
参考文献
遠藤竜治 他,関節拘縮を予防するために必要な関節可動域運動の検討 ラットにおける実験的研究,第43回日本理学療法学術大会,2008.
今宮尚志 他,関節拘縮の発生抑制における自動運動の効果-ラットにおける実験的研究-,理学療法20(4),pp.279-282,2005.
陣之内将志 他,関節可動域制限を予防するために必要な持続的伸長運動時間の検討,理学療法科学23(1),pp.169-173,2008
小野武也 他,関節可動域制限の発生を予防するために必要な関節運動時間の検討,理学療法学27(4),PP.489-491,2012.
龍田尚美 他,関節拘縮予防のための関節運動負荷条件の検討,第42回日本理学療法学術大会,ID1367,2007
龍田尚美 他,関節可動域運動による関節拘縮の発生予防効果(第2報)ラット関節拘縮モデルを用いた実験的検討,第43回日本理学療法学術大会,ID1452,2008