大菱形筋・小菱形筋の触診

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大菱形筋・小菱形筋の概要

小菱形筋は肩甲骨内側の上側にある帯状の筋肉で、大菱形筋はそのすぐ下にある菱形の筋肉です。

大・小菱形筋や肩甲挙筋は、頭側から肩甲骨内側縁にくっついているので本質的には肩甲胸郭関節に、肩甲骨挙上・内転・下方回旋と同じ運動を起こします。違うのは頚椎の対側回旋が菱形筋、同側回旋が肩甲挙筋というくらいです。

触診方法ですが、大菱形筋と小菱形筋は僧帽筋の深層にあるため、直接の触診は困難です。しかし大菱形筋の一部は、肩甲骨の下角の内側方で僧帽筋に覆われない部分があります。

すぐ近くには大菱形筋の内側下縁と僧帽筋の外側下縁と広背筋の上縁で囲まれる聴診三角と呼ばれる部分があって、筋層が薄いため打診や聴診に有効な部位です。

英名のrhomboidはギリシャ語でひし形をあらわすρόμβος (ロンボス)に由来します。これは菱脳 rhombencephalonとも共通のものです。

大菱形筋・小菱形筋の詳細

和名

大菱形筋

小菱形筋

英名Rhomboid minor

Rhomboid major

起始

大菱形筋:

第2胸椎ー第5胸椎と同部位にある棘上靭帯

小菱形筋:

項靭帯の下部、C7-Th1の棘突起

停止

大菱形筋:

肩甲骨下角(さらに下につく場合もあり)から棘突起までの肩甲骨内側縁

小菱形筋:

肩甲棘付近の肩甲骨内側縁

作用

 肩甲骨の内転、挙上、下方回旋

支配神経肩甲背神経 C4、5
支配血管 頸横動脈、後肋間動脈(上方)
形状 
筋連結

大菱形筋:

小菱形筋、大円筋、僧帽筋、前鋸筋

小菱形筋:

大菱形筋、大円筋、僧帽筋、上後鋸筋、前鋸筋

触診大菱形筋、小菱形筋の筋線維は、ほぼ水平に走行している。肩甲骨内転と下方回旋の複合運動で僧帽筋の上から触診できる。

触診の手順

全体像と筋の書き方

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まず肩甲骨を書きます。

頚椎を屈曲してもらって一番飛び出ているのが第7頚椎。少し小さいのが第6頚椎。

大菱形筋はこの次の第5頚椎までついてるので、ココまで書きます。

今度は第7棘突起から降りて第5胸椎までおります。上角がTh2、下角がTh7レベルなのでこれを参考に慎重に棘突起を数えていきます。

頚椎の太く丸い棘突起と違って胸椎の棘突起は、長細いく幅があるのが特徴的です。

線の色

オレンジ色:小菱形筋、大菱形筋

紫色:棘突起、肩甲骨、分かりにくいですがC7は紫で塗りつぶしています。

緑色:小菱形筋と大菱形筋の補助線

大菱形筋の起始部・付着部

C7からTh4までの棘突起に押し込むように触ります。

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大菱形筋と小菱形筋との筋間

表層に走行している僧帽筋中部線維は水平の線維ですが、小菱形筋と大菱形筋は斜めに走っているので、線維の違いから触り分けることが出来ます。

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大菱形筋の下縁部

下角から第4胸椎まで触りましょう。

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小菱形筋の起始部と付着部

C7からC6を探して横から押し込むように触りましょう。

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上縁部

肩甲棘と内側縁上部からC6棘突起まで走行しているので、たどっていきましょう。

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下縁部

大菱形筋との筋間なので、走行を意識して垂直に隙間に押し込むように触りましょう。

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参考文献;

監訳 山崎敦ほか,オーチスのキネシオロジー 身体運動の力学と病態力学 原著第2版,2012.

編集 鈴木重行,ID触診術,2005

編集 河上敬介,磯貝 香,骨格筋の形と触察法.2013

監修 河合良訓,肉単(ニクタン)〜語源から覚える解剖学英単語集〜.2004