半月板はとても壊れやすくて、ひざに挟まって悪さするし必要なのかな?
と思うことがあります。
でもキリンの首が長いのは葉っぱを食べるために進化したように、半月板が膝にあるのにもそれなりの理由があるものです。
半月板の機能ははワッシャー(座金)に例えられることがあります。
要はクッション作用として重要ということです。
だから壊れやすいとも言えます。
半月版の役割はワッシャーと似ている
画像をみてもらうと分かりやすいのですが、
ナットと木材の間にある茶色の円盤がワッシャーで、50円玉みたいに真ん中に穴が開いた構造になっています。
2つの間に挟まることで接触面積を増やす「緩衝剤」の役割を果たしており、半月板もこれと同様の機能を持っています。
大腿骨は内側顆が外側顆より大きく不規則な凹凸をしており、軟骨に集中した負荷を与えないために半月板が必要なのです。
半月板の血管・血流の特徴
半月板の栄養は膝窩動脈から分岐した内・外側下膝動脈が外側から入り栄養を供給します、外側の血管が多い場所をRed zone(画像の赤色)と呼びます。
中心部になると血流は乏しくなるため滑液から栄養を受けます、ここを White Zone(画像の紫色)と呼び自然治癒能力が低い場所です。
中間はRed White Zone(画像のワイン色)と呼ばれ、それぞれの中間の特徴があります。
半月板が損傷した場合はまず保存的に治療されます。
しかし伸展障害や嵌頓などでロッキングを頻繁に起こし始めると手術の対象となり、損傷部位が血管が多い外側であれば縫合術、血流の乏しい内則であれば一部切除術の対象となります。
これは自然治癒能力の差ですね。
手術の予後ですが半月板切除は一部切除であれ長期で見ると関節軟骨の変成を認めるといった研究があります、だが反対に関係性はなかったという研究もあります。
これらの研究が示唆するのは脛骨にかかる負荷の量と半月板の残存量には関連があり、切除術を行った膝への強い負荷は変形性関節症へ進行する可能性が高くなるかもしれないということです。
ショックを吸収する半月板をとるのだから強い負荷を与えてはいけない、というのは感覚的に理解しやすいですね。
半月板の再生医療
PHOTO : Herriot-Watt University, Edimburgh
切除にリスクがあるなら再生はどうでしょう?
現在の再生医療では網膜や皮膚など簡単な組織は作れますが、心臓や肝臓など栄養を運ぶ血管網や神経など複雑な組織を持つものはまだ作ることはできません。
上の画像は3Dプリンターを使って細胞を印刷しようという試みで、実験室レベルですがES細胞を積み重ねることに成功した画像です。
ちなみに人工的に臓器を作成するにはあと10年程度はかかるとのことです。
半月板も比較的簡単な組織なので再生医療の実用的な話がでてきていて、自治医科大学先端治療開発部門が関節内に半月板のもとになる幹細胞を注入することでラットの半月板を再生することができたと報告しています。
臓器プリントとは違って生体に直接細胞を注入する方法なので、再生半月板の患者さんに出会う日もそう遠くなさそうですね。
今後は保存療法・手術療法の他に第三の選択肢として期待大ですね。
参考にした文献、HP
オーチスのキネシオロジー
プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系
運動器疾患の「なぜ?」がわかる臨床解剖学 工藤慎太郎
STEP 整形外科 高橋正明