内側広筋の筋力増強は一般的なトレーニングとして普及しています。
これは内側広筋斜走繊維で膝蓋大腿関節(PF関節)の外側変位を予防する目的で鍛えられことが多いです。
これは学生時代から当たり前のように教えられてきましたが本当に効果はあるのでしょうか?
最近の動向を調べてみました。
内側広筋のトレーニングは必要?本当に必要か文献で調べてみた!
目次
内側広筋は伸展最終域で活動しない
内側広筋が伸展最終域で働くことは常識として教えられてきました。カパンディの原著第5版でも「遠位方向で膝を伸展し、それが膝蓋骨の外側脱臼の防止に特異的に働く」とあります。
しかし最近の筋電図の研究によってなんと、内側広筋は最終伸展域で活動が弱まっていることが分かりました。また1981年に行われた岩崎らの研究によると内側広筋に麻酔ををかけても最終伸展が可能であったとされており、最終伸展域での活動は否定的な意見が多いです。
内側広筋の特徴を筋電図から探しても膝関節の可動域や股関節の位置によって特に働きやすい場所は見つかっておらず、他の大腿四頭筋と共同して働くとされています。
なんでパテラの外側変位が起きる?
斜走繊維の走行から働くと外側脱臼を予防するのは十分考えらます。しかし他の大腿四頭筋と同様の働きをするのであれば廃用として内側広筋のみの筋力低下は考えにくいです。
つまり内側広筋が弱ったから膝蓋骨が外側偏移するのではなくて、大腿骨の外旋や距骨下関節の回外、骨盤後傾などのアライメント変化の結果として大部分の膝蓋骨外側変位が起こっていると思われます。
このことからアプローチは次の順番が良いと考えられます。
- アライメント変化の要因に対するもの
- 1の改善が難しければ内側広筋の筋力増強
例えば膝蓋骨外側変位の1次的な要因が、円背姿勢のため骨盤後傾・大腿外旋が起こり大腿筋膜張筋の過緊張だった場合は
- 脊柱の機能改善
- 改善が難しければ筋膜張筋の緊張緩和
- 2と平行して内側広筋の筋力増強
となります。
でも内側広筋トレーニングのパテラセッティングは効果あるけど?
従来、内側広筋のトレーニングとしてされていたパテラセッティングは、大腿直近を除いた広筋群の活動が優位になることが分かっています。
ちなみに市橋先生の運動療法学によると従来のパテラセッティングでは大腿直筋の筋活動が最大筋収縮の55パーセントでしたが、腹臥位で行うと80パーセントに高くなり全ての大腿四頭筋に効果があります。
なんだかんだで大腿四頭筋のボリュームが大事
大腿四頭筋の筋力の向上と膝関節前面痛の軽減は強い関連があるため、内側広筋のトレーニングが効果を挙げたというよりも大腿四頭筋全体の筋力向上のため膝関節が安定したと考えられます。
結論:膝蓋骨外側変位の原因を取り除いて改善が難しい場合、コンディショニングとして内側広筋のトレーニングは必要。
しかし現状では内側広筋のみの収縮できるトレーニングの画期的な方法はないため、他の原因を考慮しながら大腿四頭筋を鍛えよう。
知識を効率よく吸収するなら、良い本を読もう!
世界一美しい解剖学書。膝関節のバイオメカニクスも載っていますので、手にとってみてください。
筋骨格のキネシオロジーも有名ですが、こちらもオススメ。バイオメカニクスが網羅されています。DVDも付属していますよ。
触診の本ですけど、遺体で本物の解剖学を勉強することができます。
参考にした文献やHP
プロメテウス解剖学アトラス 坂井建雄
オーチスのキネシオロジー 山崎敦
運動療法学 障害別アプローチの理論と実際 市橋則明