僕は整形外科疾患のOPE後を担当することが多いのですが、なかには術後合併症を患う患者さんがいます。とくに僕のなかで疑えばすぐに報告すべき疾患が、3つあります。
それは「DVT」「CRPS」「術部の感染」の3つです。
どれも腫脹や痛みなど重なる症状があり、本のなかでは似たような初期症状で書かれており、簡単な区別するのは(僕には)難しいものです。どんな具合で評価やDrと相談すればいいのでしょうか。
まだ答えを探している最中で説明が難しいのですが、今回は仮想のケース紹介形式で僕の現状をまとめておこうと思います。
仮想のケース紹介
目次
上腕骨近位端骨折の患者さま。14日経過。
観血的固定術でガッチリ固定されており、本日よりpassive ROM-exを許可されました。
患部の局所状態はガーゼとフィルムに覆われており、創部の詳細はみえませんが、少し浸出液があったとカルテにあり。
前腕には浮腫が見えます。
右肩拘縮の解除目的でROM-exとストレッチを愛護的に開始。
しかし強い痛みを右肩全体に訴え、exを「やめてくれ」と苦悶表情で訴えてきます。
ROM-exの被動性抵抗は重く、エンドフィールは筋性の伸びる感じ。痛みがあるので、当然、防御収縮も起こっています。
このとき違和感として、通常の近位端骨折の患者さまのROM-exに比べて随分の強い抵抗感と痛みに違和感を覚えたため、なにかしらのレッドフラグを疑いしました。
DVT?CRPS?感染?
まずはDVTを疑いました。鎖骨下動脈で閉塞することがあり、前腕まで広がった浮腫は閉塞を疑わせました。
橈骨動脈、尺骨動脈は三角巾で吊った肢位のためか、やや減弱しています。
浮腫の増悪がいつからか確認してみると、ここ数日とのこと。
急な浮腫の増悪はDVTの閉塞初期を疑い、SPO2が問題ないことを踏まえてDrに報告しました。
まずは報告した情報からDrからは上肢のDVTは非常にまれで考えずらく、経験上としてCRPSタイプⅡの発症が疑われるとお話を伺いました。性格的にも創部に注意が向きやすく一般的に心配性と思われる方のも疑われる要因でした。
そのまま診察に向かいます。
手指の動きは拙劣ですが、ネグレクトライクシンドロームのような無視様の症状もみらません。
ガーゼをDrが剥がし、創部をチェックしてみると創部からわずかに膿が検出。そのまま培養にだされ黄色ブドウ球菌が関節内からみつかり、化膿性関節炎の診断がつきました。このとき、熱発などの全身の感染兆候は確認されていません。
ポイントと補足みたいなもの
いかがでしょうか?少し補足という豆知識です。
違和感を信じよう
レッドフラグかな?と思ったのはROM-exの違和感です。今まで経験してきた患者さんに比べきて、なにか変。
この直感的な判断が一番重要だと思います。「変」と持ったら確認しよう!
上肢のDVTは非常にまれ
DVTは通常、下肢に起こりやすいと思います。しかし一概に起こらないとは言えず例えば、IVHが入っているとリスク因子になるそうなので注意が必要です。
実は感染源が近くにあると凝固しやすくなると見たこともあるので、今後も注意が必要かなと思います。
CRPS、、、わかんないときは専門科の意見を大事に。
画像引用:住谷ほか,CRPSの診断と治療 より表1、表2引用
僕なんかはがっつりとしたCRPSのかたに出会うのがまれなのもあって、評価は探り探りです。なのでまずは症状と照らし合わせることが重要だと思っています。参考に住谷先生の論文から症状を引用しておいときます。
あと僕のなかで理学療法で「CRPS」や「痛み」といえばこの方のブログ。毎回、勉強させて頂いています。すっごくオススメ。
感染はハッキリ分かるまで時間がかかりやすい
膿が創部からでてくるまでおよそ3週間ほどかかそうです。傷口の発赤や浸出液などの周辺症状で疑いが持てる可能性がありますが、だれが見てもマズイと思う兆候がでるまでに、時間がかかるということです。
以上。
自分も患者さまも守るために、見逃さないように目を光らせときましょう!
参考文献、HP
住谷 他、CRPSの診断と治療