未だに苦手な頭部CTの読影をなんとかするべく、ブログにまとめることにしました。
基礎的なことから少しづつ確認していきたいと思います。
読影をして知りたいのは機能予後です。
頭部CTをみて今後患者さんがどのような経過をたどって、どの程度のゴールに達成できるのか予測をたてるのに活用していきたいですよね。
そのため必要な知識は二つあると思います。
- 脳梗塞や出血は脳にどんな変化を起こすのか?
- 障害が起こっている部位はどんな機能があるのか?
この中で今回は1つめの脳にどんな変化が起こっているのかに焦点を当てたいと思います。
わかりやすくするために脳血管障害の8割を占める脳梗塞に限定してすすめていきますね。
2つ目は運動繊維や感覚繊維など部位別に変えて次回以降に考えていきます。
CTで脳梗塞の画像の経過を追ってみよう!
目次
CTで脳梗塞はどう見える?
まずは基礎の復習からいきましょう。
CTは低吸収域は黒く、高吸収域は白く写ります。
X線をよく通す空気や脳梗塞は黒く写り、通さず吸収する出血や骨、金属は白く写ります。
イメージ的には固いものは白く写り、柔らかいものは黒く写るといった感じでしょうか?(ちょっと違う)
これは「黒いから脳梗塞で〜」と考えながら見るのではなく感覚的に確認できるようになりましょう。
画像出典:脳血管障害 – Wikipedia
発症から慢性期までの脳梗塞CT画像の経時的変化
次にCTで見た画像の変化を把握しておきましょう。
脳梗塞は経過の中でずっと低吸収域の黒い状態なわけではなく、刻々と画像は変化していきます。読影する上では大変なのですが、これを利用することで発症の時間を逆算してt-PAなど血栓溶解療法の適応範囲を判断することができます。(3時間が投与のリミットです)
発症直後:所見なし
発症直後はCT画像では判断することがでないので、発見には身体所見が重要になってきます。
鑑別で重要なのが「低血糖」と「てんかん発作」で、特にてんかん発作が麻痺を伴うことがあり紛らわしいとされています。
超急性期で脳梗塞との鑑別に有効なのが共同偏視です。眼が麻痺の反対側に向いているなら脳梗塞、同側ならてんかん発作です。
超急性期(発症から24時間):所見なし〜earlyCTsign出現 細胞性浮腫がはじまる
明らかな脳梗塞をCTは上で発見するには発症から数時間以上で必要です。その後にearlyCTsignがみられます。
超急性期の脳梗塞発見にはCTよりもMRIのFLAIR画像(発症3〜4時間で発見可能)か拡散強調画像(発症から1〜2時間で発見可能)が有効です。しかし簡単に撮影ができて普及しているのはCTなので読影の機会が多くありearlyCTsignは重要になります。
画像出典:山本(2006)救急医療におけるCTで検査 一番左がearlyCTsignが出現している画像。3日後には真ん中の画像になります。
earlyCTsign(早期虚血サイン)
- 皮髄境界消失、
- レンズ核の不明瞭化
- 脳溝の消失
しかしこれが発見できるようになるにはしっかりとしたトレーニングが必要です。専門のトレーニングサイトもあるので時間のあるときに練習してみてください。
急性期(発症から1〜7日):低吸収域 細胞性浮腫に続き血管性浮腫もはじまる
低吸収域がしっかり確認できるようになります。
細胞性浮腫とは脳への血流が途絶えて細胞内でNa/Kバランスが崩れて細胞が浮腫を起こすことで、血管性浮腫とは血液脳関門が機能しなくなり血漿タンパクが血管外に漏れてさらに浮腫を増加させます。
浮腫が悪化すれば脳が強く圧迫されると脳ヘルニアを起こしてしまい後遺症の悪化や命を落としてしまうことがあります。
亜急性期(発症から1〜3週間):低吸収域→fogging effect→低吸収域 細胞壊死にて浮腫が少しづつ軽減
回復の過程で低吸収域→fogging effect→低吸収域と移り変わっていきます。
経過にあるfogging effectとは血管性浮腫が引いて水分が少なくなるため、低吸収域の濃度が相対的に上昇して正常画像のように見える現象のことです。だいたい2週間前後で見られるとされています。
ちなみに適当な日本語訳はみつからなかったです。
慢性期(発症から1ヶ月以降):低吸収域 壊死と吸収と瘢痕化
髄液濃度と言われる低吸収域となります。
知識を効率よく吸収するなら、良い本を読もう!
脳の画像のみかたはこの本がとっても分かりやすいですよ。良書です。
脳疾患に関わるリハビリの勉強をするなら、一度はこの本を読むことをオススメします。スタンダードな内容は押さえることができます。
セミナーとか無駄とは言わないのですが、体系的な知識を手に入れようと思ったら本で勉強するのが1番効率がいいです。
ほかにも脳疾患に関連するオススメの本をまとめましたので、よかったら覗いてみてください。
参考文献
脳卒中理学療法の理論と技術,メジカルビュー社,pp134-135,2013.
浮洲龍太郎(監修), 櫛橋民生(編集),研修医のための画像診断 厳選症例から学ぶ基礎知識,医療学科社,pp.15,2007.
吉尾雅治,連載第1回 脳血管障害のCTとMRIの特徴,理学療法学37(5),pp.378-379,2010.
吉尾雅治,連載第2回 水平画像の解剖学的および臨床的意味,理学療法学37(6),pp.424-426,2010.
吉尾雅治,連載第3回 CT画像による病態および能力の理解,理学療法学37(7),pp.492-496,2010.
脳梗塞の画像の経時的変化(CT、MRIの信号はどう変化するか?、画像診断)