前回に引き続き椎体骨折です。
目次
Vacuum cleftはバキュームクラフトと読み、直訳すると「空白の裂け目」という意味です。骨粗鬆症性椎体骨折の骨癒合不全の指標とされています。
武政は壊死した椎体に荷重がかかり高度の局所後彎を形成した状態で腰椎伸展位になるこ事で、椎体内の偽関節内にcleftを形成されると説明しました。
分かりやすくすると、まず椎体がなんらかの原因によって癒合しないことで壊死を起こし偽関節を生じます。
そこで脊柱伸展をすると椎体は上下に裂けて離開し、空白を埋めるように窒素や水分が溜まってしまいます。これがvacuum cleftです。
vacuum cleftはMRIなどの画像所見で確認することができ、偽関節が存在することを示してくれます。撮影条件としては伸展位や非荷重位の方が隙間が大きくなってはっきり映るようです。
これが確認された椎体はkummell’s disease(キュンメルズディジーズ)と呼ばれます。
戸次ら(2012)はLibicherらとMa, Rらを引用しkummell’s diseaseを「椎体内にvacuum cleftを認める椎体骨壊死」としています。vacuum cleftと一緒に書かれていることが多いので覚えておきましょう。
kummell’s diseaseをもう少し詳しく
kummell’s diseaseの状態では脊柱の運動は勧められません。
椎体が偽関節や遷延治癒の状態ですからコルセットや手術による十分な固定が必要です。
安静を保てずに繰り返し外力が加わると骨癒合が起こらずに骨吸収が加速してしまい後弯変形が助長されてしまいます。
戸次ら(2012)は微細な外力が骨壊死部分に繰り返し加わった結果、椎体消失が生じた例を報告しており、骨吸収が進行した症例では椎体固定のために後方固定術だけでなく前方再建術の必要がある可能性を示しています。
kummell’s diseaseを予防しよう
椎体壊死の状態になってしまわないように予防が大切です。
急性期の椎体骨折で体幹装具を着けづに動作することは、NWBの下肢にシーネもつけずに荷重しているようなものです。
田中ら(2003)は椎体骨折より一週以内に安静及び軟性コルセットを開始した群は骨癒合が良好でcleft形成を認めなかったとしています。
また一度形成されていても適切な固定と医学的管理を行えば進行を防ぐことが可能で、吉田ら(2002)はVacuum像のある椎体癒合不全例に再度のコルセット装着した上で脊柱伸展運動と仰臥位の禁止を行いました。
すると平均105日で従来より早くVacuum像が消失したとしています。
実際には高齢の女性に椎体骨折が多くコルセット装着を嫌がる場合が多いと思いますが、椎体保護のためにプロトコールを守ってしっかりつけてもらえるように工夫しましょう。
近日中に経皮的椎体形成術について書けたらと思います。
圧迫骨折についてセラピスト向けの本がでました!
初学者向けに赤羽先生が書き下ろした教科書がでました。熟練者には物足りませんかもしれませんが、圧迫骨折の治療に悩んでいる理学療法士ならオススメです。
参考にした文献とHP
Libicher, m., et al.; The intervertebral vacuum phenomen as specific sign of osteonecrosis in verte-bral compression fractures: results from a radiologi-cal and histological and histological study. Eur.Radior., 17:2248-2252,2007.
武政龍一:骨粗鬆症性椎体骨折の病態.関節外科,29(5):10-17,2010.
田中寿人 他,骨粗鬆症性脊椎骨折のMRI評価及び早期安静固定による予後調査,整形外科と災害外科52:(4)791~795,2003.
戸次大史 他,椎体の骨吸収により著名な後彎変形を生じた腰椎骨折の治療経験,整形外科と災害外科61:(2)213~217,2012.
鳥巣岳彦 他,標準整形外科学第9版,医学書院,pp.632,2005.