扁桃体と猪狩完至の覚悟の量

扁桃体ってなに?

アーモンド

アーモンド状の形をしている神経細胞の固まりで、記憶に関わる海馬の先についています。情動と呼ばれる動物的本能の中枢として知られていて、恐怖や痛みに反応して活動します。

外部からの情報は視覚や聴覚など五感として扁桃体に伝えられます。これが扁桃体で危険と判断され興奮すると視床下部や脳幹まで興奮が伝わります。これらは自律神経掛系の中枢なので心拍数・血圧・呼吸数の増加などの反応を引き起こします。危険に対処する体制を整えるわけです。

この機能のおかげで危ないものを避けることができるし、戦うことができます。厳しい自然の中で生き残るためにとても重要な器官なのです。

扁桃体を壊された猿の実験

Amygdala

画像出典:Anatomography

もし扁桃体がなくなってしまったらどうなるのでしょう?

実験によって扁桃体を壊された猿は蛇を素手でつかむなど危険な行動を行ってしまいます。この症状を発見者の名前からクリューバー・ビューシー症候群と呼びます。

猪狩完至の覚悟の量

猪狩

画像出典:グラップラー刃牙 28巻より抜粋

漫画のグラップラー刃牙に猪狩完至というプロレスラーが登場します。彼の言葉に「覚悟の量」という話があります。プロレスラーは相手の技を受けきることで肉体の強靭さを魅せるわけですが、攻撃を受けると扁桃体が反応してしまうはずです。すると恐怖反応が起こり目をつむって逃げ出してしまいたくなるはずですが、彼は堂々と技を受けて立ちます。それを支えるのが「覚悟」なのです。また「量」が大事です。

この痛みに耐える「覚悟」は内側前頭前野による恐怖反応の抑制だと思われます。内側前頭皮質は進化とともに大きくなってきた人間らしさを司る部分で、ここがすぐにでも逃げ出したい恐怖反応を押さえることで受け身など次の行動に移ることがきます。

また痛み刺激は来るのが分かっている場合は、前頭前野は活性化し主観的な痛みを押さえることができます。これは予測の範囲内である限りは我慢することが出来るということで、覚悟の量とは痛みの予測量と言えるでしょう。

つまり自分を奮い立たせて覚悟を決めることで痛みに臆することなく行動し、痛みに耐えることができるということです。プロレスラーってなんて高次な感情で動いていて、なんてカッコいいんでしょうか。

痛みとうまく付き合おう

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猪狩完至のように痛みを受け入れるのとは逆に、痛みに対して有害だと思う人は扁桃体が強く反応します。長く扁桃体が活動すると内側前頭前野はやがて疲れて萎縮していき、より痛みを感じやすくなってしまいます。同時に意欲の低下や意思決定の曖昧さがでてくるようです。

ここから言えるのは猪狩までとはいかないけど、痛みとうまく付き合う気持ちが大切ということです。セラピストは患者さんが痛みと向き合えるように接しないといけません。

怖い表情や仕草は不安を生み、やがて扁桃体に恐怖反応を覚えさせてしまいます。自分が患者さんやスタッフの視界に入っているだけで影響を与えていることを忘れてはいけないです。猪狩のような自分を律する覚悟を持って行動したいですね。

参考文献、HP

リハビリテーションのための神経生物学入門 森岡周

脳単

グラップラー刃牙 28巻 板垣恵介

BodyParts3D/Anatomography

前頭前皮質 – Wikipedia

感情 – Wikipedia