凹凸の法則って本当にあるの?膝関節を例に反証した文献を紹介

みなさん、凹凸の法則はご存知でしょうか?

理学療法士ならROM-exを勉強したときに、必ず紹介される有名な法則です。

この概念はkaltenborn先生という、徒手療法で有名な先生が提唱したものです。

凹凸の法則は関節面の形から副運動がどの方向に起るのか予測できるとされており、多くの臨床家がこれで関節内運動を予測して可動域練習を行って治療成果をあげてきました。

多くの教科書に書かれており理学療法士や作業療法士には常識として浸透していると思うのですが

しかし最近では疑問視されつつあります。

というのも最近は計測機器が発達しており過去には観測できなかった細かな関節内の副運動を3次元研究によって評価できるようになっているからなんです。

そのため研究結果と凹凸の法則に矛盾が生じており、「間違っている」「例外があるので法則ではない」と声があがっているようです。

この問題について京都大学の市橋先生が書かれた「凹凸の法則に従った関節可動域運動は間違いである」という刺激の強いタイトルの文献に、

膝関節屈曲を例に凹凸の法則の反証が、詳しく説明されているので今回はこの内容を簡単にご紹介します。

膝関節の屈曲の凹凸の法則のどこに矛盾がある?

膝関節は大腿骨が凸、脛骨が凹になります。この運動を脛骨から見た場合、凹の法則に従って脛骨は屈曲とともに後方へ滑って行くことになります。

画像のAは脛骨が前方移動した場合、Bが後方へ移動した場合です。

しかしこれが脛骨が後方へ移動する並進運動だったとき大腿骨と脛骨はぶつかってしまい深屈曲が不可能となってしまいます。

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画像出典:市橋,凹凸の法則に従った関節可動域運動は間違いである

また次の画像は大腿脛骨関節の可動域ごとの接触場所を示しています。

左が大腿骨で右が脛骨なのですが屈曲になるに従って後方へ移動しているのがわかります。つまり脛骨は大腿骨に対して前方に移動してきているのが分かります。

スクリーンショット 2015-02-27 22.45.35

画像出典:市橋,凹凸の法則に従った関節可動域運動は間違いである

この他には肩関節の外転時に上腕骨頭は凸側になりますが、肩甲窩に対してわずかに上方に滑ります。

また外旋時には後方へ、内旋時には前方へ滑るとも報告されており、2つとも凹凸の法則に矛盾するように動きます。

骨だけでなく靭帯、関節包、筋肉などの影響を受ける

なぜこのような凹凸の法則から外れた動きが起きるのか?これは筋や靭帯や関節包などの組織からの影響を受けるからなんです。

膝関節屈曲の動きは「膝はどうやって曲がる?ロールバックはPCLが主役」に書いていますので参考にしてみて下さい。

凹凸の法則は関節面の形状から方向を予測していますが関節の動きは他の要素がたくさん入ってくるので骨だけでは説明がつけれないんですね。

なので基本的な考え方としては参考になるのですが、凹凸の法則だけに頼らず動かす関節のバイオメカニクスを知って評価する必要性があるのだと思います。

運動療法学は必ず持っておきたい一冊

この文献とほぼ同様の内容が市橋先生の書かれている運動療法学の「凹凸の法則」の項に記載されています。

反響の大きな意見ですから反対意見もチラホラ見られており、モヤモヤする方は一度覗いて全文を確認してみるといいです。

エビデンスに裏打ちされたキリッとした教科書なのでオススメです。

参考文献

Carol A.Oatis,オーチスのキネシオロジー,山崎敦(監訳)他,RoundFlat,pp.114,2012.

市橋則明,凹凸の法則に従った関節可動域運動は間違いである,理学療法京都 36 ,pp.2-6,2007