大腿骨の骨頭はゆるやかに前上方に向いて曲がり、頚体角と前捻角が作られています。
今回は頚体角の役割についてのお話です。実は正常な頚体角って絶妙なバランスを保ってるんです。
正常な角度は文献によって違いますが、年齢によって変化していきます。
生まれたての新生児は130度で、1〜3歳に成長すると増えて平均で143度となります。
しかし成人になる頃には125〜130度となり、年を重ね高齢者になるとさらに減少して約120度となります。
骨は荷重によって力学的に優位になるように変化していきます。(ウォルフの法則)
この変化で股関節にどんな影響がでるのでしょうか?
頚体角の役割と大きさによる違い
外反股と内反股
注目するポイントは「剪断力と圧縮力」「外転筋のレバーアーム」の2つです
青色が剪断力、緑色がレバアームを表しています。
外反股の場合
外反股になると、圧縮力が増加して剪断力が減少します。逆に内反股になると圧縮力は減少して剪断力が増します。
圧縮力は上から押さえる力で、剪断力が頸部を折るようなに働く力です。
外反股は外転筋の視点でみるとレバーアームが短くなり力学的に不利になります。このため立脚で体を支えるのが難しくなりトレンデンブルグ歩行などの一因になります。
また荷重面が外側に移動して面から点になるため、一部に圧縮力が集中してしまいます。だから軟骨へのダメージが増えるというわけです。
OAに進行しないか心配ですね。
内反股の場合
内反股は逆にレバーアームが長く外転筋が力学的に優位になります。整形外科医のなかには股関節保護のため、わざと内反位に整復する場合があります。
しかし「優位=通常より強い力」なので臼蓋の摩耗促進や拮抗筋の疲労、疲労骨折の可能性が示俊されています。
あと大腿骨頸部骨折のCHSなど観血的固定で、内反股の剪断力増加はやっかいです。せっかくOPEで固定したのに、荷重に負けて骨頭がお辞儀したら台無しです。
人工骨頭の頚体角はどうなってる?
うちの職場にある人工骨頭は約130度でした。どこのなんでしょうね?
ストライカーという人工関節メーカーでは、127度と132度でラインナップされていました。
この角度は高齢者で置換術を施行した場合、注意が必要です。
高齢者は120度程度の内反股が多かったですよね。
例えば130度だと10度分だけ、患側が延長される可能性があります。わずかな差ですが、この脚長差は要チェックですね。
また術前に比べ正常に近いとはいえ外反股となり、以前よりアームが短縮して外転筋の負担が増えるのが予想できます。
犬の人工骨頭
調べていて驚いたのですが、犬用の人工骨頭も一般化されつつあります。
PC画面に角度計を当て頸体角をはかると約135度。
おそらく4足歩行だから一足の荷重量が少なく、外反股でも問題ないのでしょう。
参考にした文献、HP
オーチスのキネシオロジー
プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系
基礎運動学
STEP整形外科
標準整形外科学