ACL再建術のBTB法とSTG法の特徴

日本でのACL再建術の多くはBTB腱(膝蓋腱)とSTG腱(半様腱、薄筋)のどちらかの自家腱を使って手術をされます。

過去には人工靭帯が主流の時期もありましたが緩みや骨孔の拡大など報告されており長期的な成績が不良なため、今ではメインの再建部分にはほとんど使われません。

BTBは膝蓋腱のことでbone-patellar tendon-boneの略で、STGは 半腱様筋 ST(Semitendinosus)と薄筋 G(Gracilis)を合わせた言葉です。

一般的にはBTBが安定性に優れており、STGの方が膝前部痛の合併頻度が少ないとされていますが、予後に大きな差がないといった意見が大半です。

ではもう少し詳しく2つの特徴をみてみましょう。画像は内視鏡で確認したACLです。

ACL

画像出典:Anterior cruciate ligament – Wikipedia

BTBとSTGの再建術の特徴

BTB法

BTBの特徴は名前の通り(bone-patellar tendon-bone)両端に骨が付着していることです。ACL再建術で移植された腱は術後壊死となり再血行化が生じてからリモデリングが生じて強くなるのですが、

BTBでは両端の骨を起始停止の近くの骨に固定できるため、腱と骨が癒合して固定するSTGより早期に安定します。

デメリットとして伸筋腱を採取するため大腿四頭筋の伸展筋力低下が術後は起こりますが、取られた腱はは1年以上経過すると閉鎖していき筋力回復は良好です。

しかし完全に元通りと言うわけではなく、6年経過しても正常組織と比較して繊維構造は壊れており、血管や細胞成分が多く正常組織に戻らなかったっと報告されています。

このためかBTB短縮と膝蓋骨が低位傾向のようです。

また最初にも触れましたが膝前部痛や不快感が残存しやすく、特に5度以上の伸展制限で多く残る傾向です。

半月板の処理を含む手術の場合は伸展制限が残りやすいので注意が必要です。

STG法

一束再建術とACLの解剖学的走行に近い二重束再建術があり、

2重の方が前方安定性と回旋安定性に優れているとされています。

BTBより固定するまでの時間はかかりますが、痛みのコントロールは良好です。

こちらも採取された膝屈筋の筋力低下が術後早期みられるものの、近位部より再生されるため1年後にはほとんど復活します。

しかし停止部までの再生まで起らず深屈曲での筋力低下などパフォーマンス低下はBTBと違い残ってしまうようです。

特に薄筋腱の採取による膝関節屈筋力の低下は目立っており、健側と比べてSTのみの採取では95.7%でしたが、STGになると91.9%まで長期で低下したと報告があります。

なので膝関節屈筋力低下の観点からは基本的には半腱様筋のみで再建するほうが望ましく、実際にパフォーマンスを優先する方はST腱のみの手術も行われています。

下の動画はSTG法による手術の3D動画です。分かりやすいので参考にしてみてください。

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参考文献、HP

前十字靱帯(ACL)損傷診療ガイドライン 2012 – Minds 

前十字靭帯損傷の手術 – 整形外科 北新病院

ACL損傷集中講座 6コマ目