骨折後に拘縮を予防をする、ならまずは浮腫を予防しよう

骨折など整形疾患の急性期は局所的な浮腫や腫脹がおこります。

整形疾患の浮腫。

コレそのままにしておくと拘縮を進行させて大変なことになるんです。

下手な管理をすると維持期まで浮腫が残っていたなんて事態もおこってしまいます。

この場合癒着をいたずらに進行させてしまって、拘縮の治療は難渋するでしょう。

なので急性期の整形疾患に関わるセラピストには浮腫対策は必要なのです。

骨折後は浮腫を予防して拘縮を進行させないようにしよう!

浮腫と腫脹について補足

ちなみに炎症が落ち着ちつくと状態は腫脹から浮腫へと変化していきます。

しかし実際は混合している場合も多く明確な線引が難しいので、今回ははれている状態をシンプルに浮腫と書かせて頂きます。

浮腫は拘縮を進行させる

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画像引用:組織学的見地からの関節拘縮の病態と徒手理学療法

さて浮腫は栄養をたっぷりの水分のため、ほったらかしにしておくと周囲の組織が次々と癒着をおこしてしまいます。

また長い時間続くと、水分に溺れた細胞たちは死んでいき結合組織へと変化していくのです。

次に病理学的なきちんとした説明も用意しておきます。

次の文章は沖田実(2013)関節可動域制限第2版からの抜粋です。

外傷後の炎症期は、抹消血管の透過性亢進により障害部周囲は組織液が貯留し、同時に好中球やマクロファージ、

繊維芽細胞(fibroblast)などの細胞浸潤もみられ、これらにより結合組織の増生が躍起される。

また、このような状態が継続するとその組織は低栄養、低酸素状態を強いられ、

壊死を生じ、これを貪食する目的で細胞浸潤も活発となる。

<中略>

このように、浮腫の発生は軟部組織の器質的変化を促すため、関節可動域制限の発生に直接的な影響を及ぼす可能性がある。

このように浮腫はどんどん組織内を動けなくしてしまうので、少しでも早く改善する必要があるのです。

できれば回復期までに落ち着けたいところでしょう。

ちなみに可動域制限を深く知るのに、沖田先生の本はほんとオススメです。230ページの厚さで関節可動域を俯瞰的に語ってくれます


浮腫による拘縮進行の特徴

3つほどあげてみました。

・嶋田(1994)によると手指など小さな関節のほうが影響を受けやすい

手指の浮腫ってパンパンになってるので、つよくROM制限がでるんですよね。

・低栄養状態は筋が影響を受けやすい。この状態を顕微鏡でみると筋繊維の壊死、コラーゲンへの置換がおこなわれている。

栄養不足で関節包や腱ではなく筋委縮がとくに起きるってのは直感的に理解しやすいです。

・重篤な拘縮に進行したあとは拘縮に浮腫の影響はない

可動域制限の重症例では組織の線維化が進行しきっているので、これ浮腫で悪化する余地がないということでしょう。

整形疾患の局所的な浮腫へのアプローチ

まずは炎症をとるのが先決でしょう。腫脹・熱感を確認できたらアイシングです。

できればキツく圧迫して日常的に挙上もしたいところです。

徒手でどうになる程度なら、手掌でじんわり圧迫するだけでも軽減できます。改善できたら滑走性をだしちゃいましょう。

参考・引用文献

(編)沖田 実,関節可動域制限第2版,三輪書店,pp9-10,116,2013

嶋田智明,関節拘縮の基礎科学:その発生要因・病態ならびに理学療法アプローチの現状,理学療法学21(2),pp.86-89,1994.

渡辺昌規 他,組織学的見地からの関節拘縮の病態と徒手理学療法,徒手理学療法14(2),pp.51-57,2014.